随筆:「本を読んで3」

by ご近所のきよきよ


 

プログラム作っていると、細かい作業なので、自分の立ち位置を見失いがちになります。とにかく目先の問題をクリアしないといけないから、集中するわけです。そこで発見があるのですが、その発見が世界の流れのどこに位置したものなのか知りたくもなります。そんな時は一流の人の書いた文章が助けになるわけです。自分なりに考えたことが、とっくに本に書かれていると、がっかりもしますが、自分の歩みは間違っていない、見当違いのことをしてはいないと安心もしますし、自信にもなります。

 今回は、「心の計算理論」(徃住彰文著 東京大学出版会)を一気に読破しました。知識構造の計算理論が面白かったというか、すごくためになりました。プラン・ゴールで知識を捕らえていくのですね。詳しいことは本を買って読んでください。

 それとこの本に、チョムスキー氏が自然言語処理をフレーム問題の一つと捕らえて、敬遠したと書かれていました。それで、構文論に限定して研究なさっていらっしゃると。そう、私も自然言語処理はフレーム問題だと感じています。だから香澄を未夢に対応して作って、意味解析をしながら問い合わせに答えていこうとしています。オンデマンドでの文章解析という手法を取っています。フレーム問題に対応する特効薬は「オンデマンドな解析」です。

 サブサンプションロボットシステムも身体の動きに還元してフレーム問題を解決する技術です。これもオンデマンドで状況認識していくシステムと捕らえることができます。視点の変換も、3次元空間内に物体を配置し、それを目的に応じて解析することでフレーム問題に陥らずにすみます。この3次元空間を「文脈空間」とか「思考空間」とか私は呼んでいます。この空間論は青葉プロジェクトとして、いつかクリアしていくつもりです。その前に、香澄を成功させなくてはなりません。


 文の曖昧性もオンデマンドで解析していくべきかなとも思い始めました。

(例文)花子は急いで私が選んだ本を買った。

「急いで」は「選んだ」を修飾するのか、「買った」を修飾するのか曖昧です。ここで、両方の解釈を未夢は保持しているのですが、そうはしないで、

(例文)「花子は急いでいたか?」

というような問いが来たら、「急いだ」という単語があるので、「選んだ」を修飾するのか「買った」を修飾するのか解析せずに、もう決めうちで「Yes」としてしまうということもあり得る技術です。実際、それで十分なのです。


 本はありがたいものです。頭が整理されていきます。「エンタープライズSOA」(オライリー・ジャパン)や「SAPエンタープライズサービスアーキテクチャ」(オライリー・ジャパン)、「SAPコンポジットアプリケーション」(オライリー・ジャパン)も、私なりに今までなんか考えていたことをすっきりさせるよい内容でした。富士通ジャーナルも読ませてもらいました。大いに参考になりました。今私がこの世界に入るとしたら、ソフトウェアが自分で環境を判断して人手をかけないでシステムを構築していくそんなAIを目指したいと思います。プリミティブな環境とか操作とか、そんなものを構築していって、なんかできるのではないでしょうか。昔から自動プログラミングなんて研究されているし、オートノミックコンピューティングなんて技術もあります。オントロジーもあります。


 よい本、一流の人とふれあえる喜びは本の中にありますね。


 

おわり