随筆:「脳の情報処理について」

by ご近所のきよきよ


新年おめでとうございます。今年も良い年でありますように。また、一年、よろしくお願いいたします。


年末は、酒井邦嘉著中公新書「言語の脳科学」を読んでました。吸い込まれるように、一気に読んでしまいました。示唆に富んだ内容でしたので、色々なアイデアが浮かんで面白かったです。それで、考えたことを記して、どんなものかなと読者の方々に問うてみたくなりました。・・・それは、以下の事々です。ご覧くだされば、幸いです。

1.脳機構について

脳の言語野の中に意味処理領野とか文法領野とかが分離してありそう、というような内容でした。脳の機能局在というのは色々な本に載っています。視覚野とか聴覚野、運動野など。言語野としても特定処理を専門に行う様々な領野があるという、なんともワクワクすることですね。

それで、思ったのです。処理の場所が固定しているならば、データが移動しなくてはならないなと。イメージとか、聴覚情報とか、さらには感情も、ベースとしては脳の何処かの神経回路でコード化されているはずです。クオリアを実現する神経細胞群というものがあるはず。それが情報処理の基本的なデータになると思うのです。そのデータが別の場所(領野)で処理されるわけです。それは連想で結びつける処理とか、イメージですと、パターン認識とかになるわけです。そんな処理をするために、データは移動しなくてはならないわけです。

データはビットパターンでしょうから、移動したらもともとのクオリアは無くなってしまいます。だから、このビットパターンにクオリアがコードされているだろうと。計算機の知識だとそれは、アドレスになりますね。クオリアを実現していた時の領野のアドレスですね。

脳はコラム構造のモジュールがまとまったもので、コラムは6層の神経系レイヤーからなっているという。レイヤーの何処かがアドレスを担っているかも知れませんね。

それと、どんな処理をするのかという、コマンドもコード化されている必要がある。これも計算機からの連想です。

文法領野はデータに添付されたある種の情報を基に、文のフレームを選択(アソシェーションを保持して、このフレーム構造情報を何処かの領野から取り出す)し、そのデータエリアに単語データを埋め込む・・・なんて処理が考えられます。

記憶って、すべてクオリアのアソシェーションで表現されているのでしょうか。事象も運動も、皆?

2.文法の基盤

文法は生得的な能力であるという。それは、チューリングマシン以下、正規文法以上であるだろうと。

私的に考えますに、次の機能かと。

<基盤機能>
  • アソシェーション(連想機能)
<メイン機能>
  • 語順処理(語順パターン)
  • 語の変形処理(変形パターン)
<サブ機能>
  • 入れ子処理(入れ子パターン)
  • 係り受け処理(係り受けパターン)
  • 機能語、自立語弁別処理(機能パターン)

生成文法はこれら機構によって作り上げることができるでしょう。

だから、言語能力の本質的なことは、文法能力の上にある、情報のパターンの特徴を見出す能力だと思うのです。新規の情報パターンを見出し、それと文法とか単語とかのコンポーネントを作り出したり、情報を汎化して既存のコンポーネントのどれを使うかを決定する。つまりデータマイニングの高度な能力。良く解らないですけれど、そんなことを漠と感じました。

3.仮想データフロー計算機への展開

脳が無数の機能モジュールでできていて、並行処理を実現しているという。やはり、データフロー計算機は人工知能の進むべき道だなと確信するに至りました。

実際、自然言語処理をやっていて、処理が錯綜しますので、データフローみたいにシステムを作っていかないと、手に負えなくなると感じるのでした。学習機能も将来実現したく頑張っていますが、これだと人手を掛けなくしなくてはいけませんから、複雑な制御機構になったり、あらかじめ呼び出し、呼び出され関係を設計するなんてことはできません。モジュールはモジュールで成長していくように、モジュール間の関係は関係として別々に成長させていかねばなりません。そこは、脳に学ばねばならないところでしょう。

4.おわりに

脳に学ぶべき事って、これから多くなりそうです。


「元旦を 言祝ぎ迎える 喜びに ついつい夢中で 近況語る」