考察:「文パターン」

by 小山明雄


 

 英語を勉強していると、文を理解するとは何か、思いを伝えるとは何かという問いに、大きな示唆を得られます。次のような文を考えてみましょう。日本語に比べて英語は意味が直截的に語られるのが分かります。

(例文1)The pencil scurried illegibly across the page.

(訳文1)判読できない文字がそのページに鉛筆で走り書きされた。


(例文2) He wrung his hands over the prospect.

(訳文2)彼はその見通しのことを考えると心配たまらなかった。


(例文3)with one’s head drooping

(訳文3)うなだれて


 いずれも、英語の世界で意味を捕えると、意味セットが「格または助動詞属性、名詞とか動詞」の羅列として表現できていることが分かります。日本語もそうなのですが、連語をもって機能語として捉えなくてはなりません。英語はすごく参考になります。アイデアの源泉ですね。

 日本語ですと、機能語が連語になりますので、構文解析すると重たくなるのです。

(例文4)会社でプログラムを作成することを開始した。

なんて文ですと、「ことを開始した」は「begin to」という助動詞のような機能語と考えられます。そうしたほうが、意味解析結果を利用するのが軽くなります。この辺もどうするかなと和葉のコードを見ながら考えています。


 ところで、文パターンとして大きく2つが考えられます。動詞構文と名詞構文です。

(動詞構文)私はカンナで木材を削った。

(名詞構文)私のカンナでの木材の削ること

和葉は今、動詞構文しか扱えませんが、名詞構文をサポートしていかねばなりません。そのとき、名詞構文を動詞構文に変換していくか、応用システムの方で、名詞構文からも意味を抽出していくようにしていくか、迷うところであります。ま、動詞構文を標準形として押しとうすということが一貫性があっていいように思うのですが、どうでしょうか。


 意味解析の中で、特に力をいれて管理しなくてはいけないのは、Actorのhas_a関係、belong関係です。例えば次のような問いかけに答えられなくてはいけません。

(例文5)信子は列車に乗った。列車は牟礼を8時の出発して、長野の9時についた。

(例文5に対する問い)信子は今どこにいるか。

この問いに答えるには、信子が列車にbelongして、列車が長野に到着したから、信子は長野に居ることを推論していく必要があるのです。「乗る」という動詞のプリミティブな意味記号として、「+join」をあてています。「+join」の意味は、belongするという意味です。反対に、belongをやめるならば(apart)、「+disjoin」記号を割り当てています。「離れる」なんて動詞はその例です。


 和葉は日本語文解析システムですが、それだけだと何を解析結果として出力していけば有用なものになるのか分かりません。そこで、和葉の出力を利用する、問い合わせシステムとして七海を創っています。知識を意味解析結果を羅列したコーパスとして用意し、問い合わせの解答らしい部分を検索し、答えとして返すシステムです。「Watson」ですね。問いの文章も和葉で意味処理して、Prologライクな表現にして、Prolog推論を実現しようとしています。そのとき、基盤となる考え方は、意味は「格(機能語)と名詞/動詞」と属性とで表現できるというものです。


 七海を創っていると、和葉の不備が良く見えてきます。時間を掛けて、七海と和葉を良いものにしていきたく思います。



 

おわり