考察:「談話と文脈」

by ご近所のきよきよ


 

 今、認知科学や言語科学の本を読みながら、今まで考えてきたことの検証をしています。今回は、岩波講座「言語の科学」を読んでいて気が付いた点をまとめていこうと思います。この7年の成果が無いと、気が付かなかっただろう事も見つけたし、未夢プロジェクトの処理を拡張せねばならないと気が付いた点もいくつかありました。重要な技術は、

  1. 発火機構
  2. デフォルト処理機構とオンデマンド解析機構
  3. 弛緩法
  4. モデル機構
  5. メタファー機構

だと思いました。では、その辺を例をあげて議論していきたいと思います。


 人間性は談話の中に表れます。それは永い人間の歴史が刻まれた能力だからで、人工知能もこれをクリアしなくては人間と生活できません。その談話の中でなにが行われているでしょうか。

 基本的には、相手の知っていること、自分の知っていること、相手の体験、自分の体験、伝聞でしかない知識とか、そういう物を把握しないと談話は意味を持ちません。情報を的確に伝えることが談話の目的だからです。そのため、物とか人に関するモデルを知識として持っていなくてはならないと決めつけることができます。相手がどんな情報を知りたいか、どんな情報を持っているから、それを得ようという行動のプランニングが先ずあるのです。そこに談話が起動される。

 もちろん、談話には相手から聞き出す会話の手順もあるし、自分の発話の形式を決めていく手順も知識として持っている必要もあります。それも、決められたマンネリな手順がデフォルトとしてあって、状況の中で気づきがあって、そこを詳しく解析してリーズニングをきっちりやって問い合わせや回答を構築することも出来なくてはなりません。「気づき」はいつもと文脈展開が異なることを発見することで、その発見によりリーズニング機構を起動することになります。このデフォルト処理とオンデマンド処理の連携が人工知能では大切になります。事細かにいつも処理を完璧にしようとしてもフレーム問題が発生して、無数にプロセスを起動しなくてはならなくなり不可能です。それを回避するのが、デフォルト・オンデマンド処理機構なのです。


 デフォルト処理の構築は、メタファーに寄るところ大です。Aという人がお腹がすいたと言えば、臨席している全ての人モデルのお腹の状態は空腹と推定することになります。メタファーは、自然言語処理に重要になります。指示代名詞とか、欠測値の推定とか、次の文の様に、名詞の間の関係を推定するのに重要となります。メタファーは発火機構でしか実現できません。

(例文1)エンジンの音がうるさい。誰の車だろう。

この例文では、車とエンジンに所有関係があることを推定しなくてはなりません。「車」とか、「エンジン」という単語で、連想するオブジェクトを発火して、その交点をもって、「所有関係」を発見するのです。これがデフォルト。つむじ曲がりになれば、そんな関係は無いかもしれないのです。「所有関係」はシヌキドキーというメタファーの一種ですね。


 言葉は全ての状況において、区切りを発見することが重要です。分かち書き化とか、音声での単語の分離とか、文の区切りの発見、文脈の区切りの発見とかですね。それらは、生得的な何らかのパターン発見機構によって、区切る点を発見することができるようになるのです。それは知識であり、曖昧性のあるデータですから弛緩法によって、区切りを発見していくのだと考えられるわけです。


 
 

おわり