考察:「文型3」

by ご近所のきよきよ



 同じ事を言うのに日本語は複数の表現を持っています。例えば、

(例文1)未夢の辞書充実作業をしていた。

(例文2)未夢の辞書を充実していた。

(例文3)未夢の辞書の中の単語を増やしていた。

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です。意味を理解しているとすると、こうした表現が全て同じである事を認識できていることが必要です。

 この事を可能とするには、

(1)「辞書を充実させる」ことが「単語を増やしていく」ことである知識が必要です。

(2)「作業」とは「辞書を充実させる」を具体的にもつ抽象名詞であるとの知識が必要です。

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 こうしてきりがない知識を持つ必要が生じていくのですが、このフレーム問題的困難を克服するには、プリミティブな記号セットで単語を、文パターンをサポートして、どんな表現でも同じことを言っているならば同じ記号群の同じ配列パターンで表現される事を保証しなくてはなりません。オントロジー設計が重要になってくる所以です。

 オントロジーは基本的に動詞構文で表現し、名詞構文の日本語表現を動詞構文に落とす必要があります。それは動詞構文の方が格が明確に表現されるからです。また、

(例文4)辞書を充実する作業をしていた。

のように「作業をしていた」のように冗長な表現を捨て去る作業も必要です。「作業」とか「研究」とかは具体的な作業を表す動詞構文でコメントしておくとかの意味解析結果の表現上の工夫が必要でしょう。そうした作業を定義するオントロジー記号が「作業」や「研究」には付されていてしかるべきです。


 単語列も基本的にオントロジーでのサポートが必要のようです。単語というより、単語列として文法や意味を担うからです。しかもそれは意味パターンマッチングで問題がおきないように唯一のオントロジー機能表現に落とし込められなくてはならないのです。意味理解とはそういう物です。

 例えば、

(例文5)踏切を横切って走る。

の「を横切る」は英語だと前置詞一つで表現されますが、日本語でも意味的には、助詞相当語として文法的には振る舞います。「横切る」という動詞の意味は気迫になるのです。「を横切る」という格助詞のオントロジーとして「横切る」という動詞型のオントロジーがあると見たいですね。


 また、

(例文6)リンゴを取ってくる。

の「取ってくる」は「取る」という動詞と「くる」という動詞が接続詞「て」で結ばれていると見ないで「取ってくる」で一つの動詞として扱い、オントロジーで「取る」、「くる」の意味を付加したい。


 同様に

(例文7)数学の定理を聞きかじっている。

の「聞きかじる」も一つの動詞として扱い、オントロジーで「聞く」と「かじる」の意味を定義したいものです。


 また定型表現パターンもオントロジーで意味を吸収してしまいたいです。

(例文8)野良犬が鶏に危害を加えた。

の「危害を加えた」は英語ですと一つの動詞hurtで表現されます。日本語でもこの「危害を加えた」は「危害を激しく加えた」というように「危害を」と「加える」の間に単語列を差し挟むことは標準には行われません。文法化しているのです。だから日本語でも「危害を加えた」は一つの動詞なのです。「危害」があたかもサ変名詞のように振る舞うのです。


また文のプロフィルというパターンがあります。

(例文8)1つの積み木にもう一つ加えると、積み木は2つになります。

この「積み木は2つになります」は、

 「It becomes that X」+「X=2つの積み木がある」

という表現にして意味理解すべきでしょう。[It become that X]が文のプロフィルになります。

(例題9)私は学校に早く行ける。

これは、

 「It is able that X」+「X=私は学校に早く行く」

という表現で表され、[It is able that X]が文のプロフィルとして扱います。これはパターンマッチング処理を問題なく行うための工夫です。





おわり