考察:「数学と物理学の問題について2」

by 小山明雄



 京都大学の入試問題でおもしろいものを見つけたので、取り上げてみます。


【問題】

α、β、γは互いに相違なる複素数とする。

(1)複素数平面上で(z-β)/(z-α)の虚数部分が正となるzの存在する範囲を図示せよ。


(2)複素数zが、

  (z-α)(z-β)+(z-β)(z-γ)+(z-γ)(z-α)=0

を満たしているとき、zはα、β、γを頂点とする三角形の内部に存在することを示せ。ただし、α、β、γは同一直線上にないものとする。


 まず(1)を解くのですが、複素数の差分と割り算が現れることから、ベクトルでかつ極座標を選択すべきだなと連想を働かせるわけです。これができないとこの問題は解けません。この辺、人工知能としてはどんな技術になるのでしょう。

 z-β=B*(cos(b)+i*sin(b))

 z-α=A*(cos(a)+i*sin(a))

とすると、

 (z-β)/(z-α)=(B/A)*(cos(b-a)+i*sin(b-a))

この虚数部が正となるから、sin(b-a)>0 ,従って、0

これを作図すると解答になります。


(2)を解くには、問題1に帰着させれば良いとは、問題の立て方から、推測できますが、三角形はαからβへ、そしてβからγへ、そしてγからαへ、各辺の左側(右側でもよい)にzがあるといえばよいのです。実際、(2)の両辺を(z-γ)(z-α)で割れば、

  (z-β)/(z-γ)+(z-β)/(z-α)=-1

となりますから、足して虚数部分がないということで、(z-β)/(z-γ)の虚数部がマイナスならば、(z-β)/(z-α)はプラスということで、(z-γ)/(z-β)はプラスになり、(1)のことが言え、結局、対称的に(2)の式から、zは三角形の内部に存在することが言えます。


 この推論で大きな思いつきは、「(z-β)/(z-γ)+(z-β)/(z-α)=-1」から、虚数部がうまく、線分αβとβγの左側にあることが言えることを着眼するところです。この辺、人工知能的にはどんな技術になるのでしょうか。


 イメージとしての知識、そんなものが重要になってくるようです。




おわり