考察:「モデルをもとにした制御」

by ご近所のきよきよ


 
 県立図書館で、前から読みたいと思っていた「モデル予測制御 Jan M.Maciejowski著 電機大学出版会刊」をザッと読みました。すごく分かりやすい、実戦的な制御理論と感じました。なんか、制御理論の本を読む事が昔からあったのですが、モデル予測制御ということについて書いた物は見受けられませんでしたので、この本を読んで、我が意を得たりの感がしたのでした。それは、小脳の動作ってこのモデル予測制御で言ってることを実現しているのではないかと思うからです。
 このモデル予測制御は、制御対象の変化をモデルとして定義し、実際の制御状態値との誤差を指数関数的に低減していくように制御系への入力を制御していきましょうという手法です。
 小脳は、瞳眼反射でも、なんでも動作モデルを持っています。モデルは脳の他の部署から与えられることもあるでしょう。とにかく、生まれつきとか学習による獲得とかでモデルが作られます。そのモデルは多分、感覚(出力データ)とか筋力(制御データ)のパターンでしょう。制御はそのパターンと、実際の運動時の感覚入力とか筋力のパターンとの誤差からはじき出した値を筋力のパターンに反映させていく過程だと思うのです。
 
 モデルは統一性がなければなりません。全体から部分へと階層構造(入れ子構造)で管理され、全体モデルから部分モデルを選択して、状況に応じて環境に応じたモデルの下で行動できるようになっていなくてはなりません。
 例えば、紐を結ぶ作業を考えてみましょう。始めは新聞紙を束ねるように、開いた輪としての一本の紐があります。最終は結び目で閉じた輪にすることが目的になります。中間もイメージがあって、紐の端をクロスし、再度クロスし、クロス部分を締め付けるという作業をすることを示します。
 そのイメージに対応した、指の動作、手の動作、腕の動作、体の動作のパターンがあるべきでしょう。紐の一方の端を指でもってもう一方の端とクロスさせる。クロスさせるのは、新聞紙にそって指をもう一方の紐端の下をくぐらせることです。そんな動作パターンを運動制御モデルとして持っていなくてはならない。そしてもう一度クロスして、紐の端を強く引けば結び目ができます。それも、パターンを生成させて実現させていきます。
 この過程では、紐の状況の変遷をイメージで持っている事と、そのイメージと現実の紐の光景がマッチしていることを判断する能力と、イメージを変化させるための指や手の運動モデルを思い出す能力が必要です。そして、そのモデルにしたがって指と手を動かします。結構複雑な機構が必要なことが分かります。でも、ロボットが歩く事の延長上に有る技術だとは思います。歩くのも結構色んなことをやっていますから。環境のパターン認識を行うとか、基本動作のパターンを発生させて、状況に応じて最適な微調整機構を働かせるとかやっておられるそうです。
 モデルによる制御は「思考」を計算機にやらせようとすると現れてくる問題ですので、オントロジーシステムとして研究していくつもりです。
 
 

 一連の外界(手足胴体)の動きを決定するのは、起点と終点の状態を認識して、オントロジーを得て(イメージのパターンマッチング)、対応する記号から制御の為の操作モデルを知識ベースから得て、実際に外界に働きかけていく。
 
 

おわり