考察:「文解析と「発火」機構」

by ご近所のきよきよ


 
 次の例文で、発火機構をメインにした文解析というものを考察してみます。
(例文)山に登ったさわやかな朝は目もしっかり覚めていた。
 
【解析の流れ】
(1) 「山」が知識との最長一致で(単語知識の発火)切り出される。そこには、品詞として名詞と意味記号群がプロパティとしてある。係り受けプロパティは(助詞接続、「だ」接続・・・)と幾つか候補を持っている。係り受けは未解決としてリストに登録しておく。
 
(2)次に単語「に」を最長一致で(単語知識の発火)切り出す。「に」は助詞で幾つかの意味記号をプロパティとして持つ。係り受けは(動詞接続、「だ」接続・・・)と幾つか候補を持っている。係り受け未解決リストに「山」が有るので、接続させる。接続関係を添付してかつ一つの概念オブジェクトとして「山に」で、係り受け未解決リストに登録する。「山」は未解決リストから削除する。
 
(3)次に「登った」を切り出す。これも単語(連語)知識の発火である。そこには、動詞と幾つかの意味記号群がプロパティとしてある。係り受けプロパティとして、(文末、名詞とか)いくつかある。「山に」と「登った」を接続させる。知識として「山に登った」は有るので、確定の結びつきとして概念オブジェクトを作って未解決リストに登録する。「山に」は未解決リストから削除する。
 
(4)次に「さわやかな」を切り出す。これも単語知識の発火である。そこには、形容詞と幾つかの意味記号群がプロパティとしてある。係り受けプロパティとして、(名詞など)がある。「山に登った」はこの「さわやかな」に係らないから未解決リストに残し、さらに「さわやかな」を未解決リストに登録する。
 
(5)次に「朝」を切り出す。これも単語知識の発火である。そこには、名詞と幾つかの意味記号(+timeとか)群がプロパティとしてある。係り受けプロパティは(助詞接続、「だ」接続・・・)と幾つか候補を持っている。未解決リストの「さわやかな」と「山に登った」の接続を解析する。接続情報から「さわやかな」と「朝」とは接続し、一つのオブジェクトを形成するとしてよい。意味的にも、「さわやかな朝」というのはある。
 また、「山に登った朝」も一つのオブジェクトとして接続可能である。「朝山に登った」という意味構文も発火する。そこで、「山に登った朝」も「朝、山に登った」という意味オブジェクトをキープする。結局、意味解析リストに「さわやかな朝」と「朝、山に登った」を登録する。係り受け曖昧性リストに「山に登った」と「さわやかな」を登録し、
未解決リストを「朝」だけにする。
 
(6)次に「は」を切り出す。「は」は主題提示の助詞で幾つかの意味記号群がプロパティとしてある。係り受けは(動詞接続、「だ」接続・・・)といくつかの意味記号をプロパティとしてもつ。未解決リストに「朝」があるので、接続させる。接続関係を添付して、かつ、一つの概念オブジェクトとして「朝は」で、係り受け未解決リストに登録する。「朝」は未解決リストから削除する。
 
(7)次に「目」を切り出す。そこには、品詞として名詞と意味記号群がプロパティとしてある。係り受けプロパティは(助詞接続、「だ」接続・・・)と幾つか持っている。未解決リストの「朝は」は接続しないからそのまま。「目」は未解決リストに登録する。
 
(8)次に「も」を切り出す。「も」は主題提示の助詞で幾つかの意味記号群がプロパティとしてある。係り受けは(動詞接続、「だ」接続・・・)といくつかの意味記号をプロパティとしてもつ。未解決リストに「目」があるので、接続させる。接続関係を添付して、かつ、一つの概念オブジェクトとして「目も」で、係り受け未解決リストに登録する。「目」は未解決リストから削除する。
 
(9)次に「しっかり」を切り出す。これも単語知識の発火である。そこには、副詞と幾つかの意味記号群がプロパティとしてある。係り受けプロパティとして、(動詞など)がある。「朝は」も「目も」もこの「しっかり」に係らないから未解決リストに残し、さらに「しっかり」を未解決リストに登録する。
 
(10)次に「覚めていた」を切り出す。これも単語(連語)知識発火である。そこには動詞と幾つかの意味記号群がプロパティとしてある。係り受けプロパティとして、(文末、名詞とか)いくつかある。「しっかり」と「覚めていた」を接続させる。知識として「しっかり覚めていた」は有るので、確定の結びつきとして概念オブジェクトを作って未解決リストに登録する。「しっかり」は未解決リストから削除する。また、「朝は」と「目も」も「覚めていた」に接続させる。「目が覚める」という意味構文が発火するので、これは確定の接続である。「朝、目が覚める」という概念オブジェクトを作る。格解析して、主格がなく、「目覚める」の主格候補として「私」があるので、デフォルトとして「私」を主格に設定しておく。「朝は」と「目も」を未解決リストから曖昧性リストに移す。
 
(11)次に、文末を認識する。解析処理は終了し、概念オブジェクトが幾つかできた。これが求めるものです。
 
 
【助詞「と」の解析】
 助詞「と」には次の用法があり、解析には工夫が要ります。
(1)原因結果を表す
  「火を点けると爆発する」
(2)順接続を表す
「火を点けると歩き出した」
(3)会話文を表す
「火を点けると言った」
(4)並列を表す
「火を点けると灯を消すとでは大きな違いがある」
 
(1)の解決には、「火」と「爆発」の間に原因結果の関係があって、それが知識化していて、この文で、それが発火して全体の意味解析に影響させることです。
(2)の解決では、原因結果の関係にないことを確認することです。ですが、文脈で原因結果になることはあります。ロボットが燃料で歩くとすると、燃料に火を点けると歩き出します。とにかく、タイムシーケンスを記述しているという状況を知識化して、それを発火することで、順接続の「と」であることが同定されます。
(3)「言う」の意味表現で構文パターンを持っていて、それを発火することで、会話文であることを同定します。
(4)名詞化があると原因結果でも順接続でもないですから並置と判断します。この辺の機構も構文を知識化して、その知識を発火させて解決します。
 
 

おわり