考察:「オントロジーでサポートされたオフィス」

by ご近所のきよきよ


 
 オフィスのパソコンは様々な形式の文書を保持しています。データベース、テキスト文章、イメージ、動画像・・・とうとう。日々のお仕事はこれらを作ったり、改変したり、変換したりすることです。
 そこで大事になる問題は、
(1)情報の電子化は一回きりで、同じ情報の再入力はしたくない。
(2)人出を介さなく自動で、様々な媒体の内容の整合性を取っていきたい。
です。
 (1)の問題は、人の行う作業は創造的な事だけにしたいという欲求からでています。一回目に情報を電子化するのは、文章を考えたり、お客様の要望を把握して伝票にするといった創造的な行為ですが、2回目以降は単なるルーチンワークです。しかも、すでに情報は電子化されているのですから、パソコンが自立的にそれを加工していくことは可能ですし、可能であれば誤りも無くすことができます。ここに人手を掛けるのはもったいないことであります。
 (2)の問題は、オフィスを設計したときは抽象的なワークフローで把握されますが、実務では、そのワークフローを構成する様々なパラメータが具体値を持っています。そのパラメータを参照する文書が正しい具体値を保持していく事、すなわち整合性を維持する事は人間にはなかなか難しい問題です。それでパソコンの出番となるわけです。XMLを使って、文章内容を意味論的に把握し、環境変数と常にマッチングを取って、最新の情報に文章内容を維持していくのです。
 例えば、オンラインマニュアルですと、プログラムのインストール先を実際の環境値にして、人が参照出来るように成っているのが便利です。それは、マニュアルのインストール先環境変数値をXMLでタグ付けして、パソコンで認識できるようにする事で可能です。
 
 (1)、(2)で重要な事は、電子化された情報がXMLでタグ付けされている事と、タグは規約によって一意であることが保証され、環境変数にバインドされていることです。ここで、オントロジーが出番になるのです。オフィスというものをオントロジーで専門的に整合化していくことが大切な作業となるのです。
 また、アクション・・・プログラムの動作の記述も、プリミティブな動作の合成としてかつリーズニング(プログラムの正当性検証)できる形式で与えることが必要です。これもオントロジーでのサポートがあってできる事でしょう。
 
 オントロジーによって、オフィスの情報基盤が与えられます。それはまさにグループウェアによる作業の集中管理と双対します。オントロジーもグループで管理していくものですから、このオフィスの生産物は全て、このグループ内のオントロジーで整合性が保証されるわけです。別のグループへの移管はオントロジーの機能で、自動変換すればいいのです。これで、(1)と(2)が実現できる環境ができる事になります。

 プログラミングについて、考察を深めてみましょう。オントロジーが土台にあると、プログラム自動構築やプログラム検証が可能になってくると思えるのです。それは、プログラムというものがBPELやWSDLといったもので仕様が記述され、記述は言語ですからプリミティブなオントロジー要素の組み合わせで表現できるはずだからです。記号系は自然言語の単語の組み合わせで表現できることからこのことは説得力ある予想になります。
 
 ソートプログラムを自動で作り上げる原理を考えてみましょう。自律プログラミングには「操作」と「発想」の両方が可能でなくてはなりません。
(1)可能な操作のプリミティブは計算機の持つ命令セットです。
(2)発想のプリミティブは基本的な問題解決の手順を知っている事と全ての事柄をオブジェクトとして捉え、操作の対象とできる能力です。
 
 ソートですから、順序の概念を計算機は持っている必要があります。比較して並べるのです。比較結果が間違っていたら、順番を入れ替える。入れ替えは、いったんバスケットに一方の数値を待避し、一方の数値を前に記述し、最後にバスケットの内容を元有った一方の数値の場所に書き戻す。このバスケットに待避し、書き戻すという手法は知識ベースとしてなくてはなりません。「発想」ですね。こういう発想は経験とかで獲得していくひつようがあるでしょう。
 
 リーズニングは、先頭から順次2つの数値を選択して、比較してそれで大小順序に誤りがないと、全体的に誤りが無い事が導出され、それがプログラムの目的である仕様に一致する事から、このプログラムが正しいという判断を下せて、終了します。
 
 オントロジーをグループウェアとして捉えたい理由は、データマイニングやテキストマイニングによって、単語を順次学習させて行きたいからです。データを解析し、概念を蓄積していくと、それをオーソライズするには多くの人の頭脳による吟味が必要です。組織立てねばいけません。感じるんですけれど、単語や記号の分類って、個人がやるとなんだか偏りを感じるものになりやすい。とっぴな判断が入ってくる。そうは思いませんか。
 なぜ・・・と問う事が多々あります。個人の判断も時間とか状況によって揺らぎます。これはどうにもならないものだと思います。だから、多くの人の判断を通してオントロジーは構築していきたいものです。抽象化も計算機と人間の耐えざる常務遂行の中で行っていって、しっかりしたオントロジーにまとめていきたい。
 それと、意味論では、記号の持つ意味が状況によって変わる(状況依存)のは常識です。そんな状況の設定も多くの人の頭脳を経て決定していくことは、納得いく体系を作るのに重要なことになってきます。
 
 こんなグループウェアも研究開発していくことは楽しい作業であることでしょう。
 

おわり