考察:「推論」

by ご近所のきよきよ



 会話には様々な推論が発生し、解決されます。次の例で考えてみましょう。

(例文)私、戸塚と電話していて寝てしまって、中俣の美津子さんがどうなったか見に来たの。

(問い)戸塚から中俣に電話したんかい。


 「電話がとぎれたので、戸塚側では心配になる。私は長野にいるから、戸塚は長距離で見に行けない。近くの親戚に電話して確認して貰う。」こんな、複雑な推論が背後で成されているわけです。問いを発した人は、例文を聴いただけで、この推論を行っています。会話はこのように、広範囲の推論をベースに成されていく物なのです。


 もっとも簡単な推論は三段論法でしょう。推論は矢印で表記して考えると分かりやすくなります。三段論法は矢印が2本連続して繋がります。「ソクラテスは人間である」が一つの矢です。「人間は死ぬ」がもう一つの矢。繋がると、「ソクラテスは死ぬ」が推論されます。一方で、「ソクラテスは死ぬ」という連続した矢から、「人間は死ぬ」矢をつけると、「ソクラテスは人間である」可能性が推論されます。

 先ほどの例文の推論も複雑ですが、矢印をもって考えると、推論は欠けた矢を見出すこととコンピュータ化されます。検索の問題になるのです。矢印は知識に裏打ちされて存在が許されます。知識がないと推論はできない。検索はオントロジーである、意味記号をもって知識を検索します。

(1)心配。(連想->)様子をみたい。

(2)自分がでかける。(知識ベース検索。距離を計算する->)遠くていけない。時間が掛かる。

(3)自分はいけない。(連想->)誰か他人をいかせる。

(4)誰がよいか。(知識ベース検索。距離を計算する->)中俣の美津子さん

(5)依頼。(知識ベース検索。->)手紙、電話などから電話を用いることを決定する。


 検索は唯一の表現でないとエラーを起こしますから、本来表現の唯一性を保証すべく神経を使うことになります。しかし、自律学習などを考えていきますと、そういうことは不可能です。表現が複数存在してくるのです。そこで、意味のクラスターとして連想関係のあるオントロジーを打ち立てていく必要がでてきます。表現の等価性を管理するテーブルが知識として存在するのです。「電話」とは「pass.data」とか「pass.information」とか「tel」なんてオントロジーで定義して、それらを相互連想して、検索に使うのです。処理時間は大きくなりますが、仕方がないことです。




おわり