考察:「推論と連想と」

by 小山明雄



 京大の入試問題をもう一度考えてみましょう。三角形の中に方程式の解が存在するというものでした。


(1)「三角形の中に解がある」という命題について、三角形を連想させます。それが問題を解く最初の手がかりです。三角形の内部という定義事項は色々あるでしょう。イメージでは、三点の作る図形の内部が黒く塗ってある状況でしょう。


(2)三点で囲まれる領域にある点は、反時計回りで常に左側にあることを推論します。これは知識としてありましょうし、出題文から推論して、それを知識で確認することでもありましょう。単なる連想でなくて、知識に記述がないことによる推論でもあります。推論の手がかりは何か?出題文から得られるし、過去の研究成果として、左側に領域を抱えるという知識が得られていることもありましょう。それを連想して手がかりとします。


(3)「線分の左側」を表す式は出題の前提として与えられていますから、それに帰着するように数式処理の問題を設定します。試行錯誤ですが、式がもっとも似てくるように、やりくりしていくことになります。パターン認識の問題でもあり、近似の評価の問題でもあります。ここには、似た式を導くという、「意志」が働くことが読み取れます。意志により指南され、試行錯誤が行われるのです。ここで、虚数部が0になるという事実から、2つの足し算になる複素数の虚数部が同じ値で、正負が逆という事実を発見しなくてはなりません。ここにも思考のギャップがあります。これも、三角形は内部の塗りつぶし領域というのと同じ普段からの基本知識として、正負が逆で絶対値が同じ数を足すと0となるという知識に着眼できる用意ができていなくてはなりません。この辺が人工知能の能力を測る試金石として存在してくる問題となるでしょう。


(4)後は、数式処理だけ。




 入試問題を解くには、このように、イメージを解析するプロセスと文を解析するプロセスの両方が必要になります。プロセスには作りつけのプリミティブとしてのプロセス群と学習によりプリミティブプロセスを合成して作るコマンドプロセスが必要ということです。コマンドはパターンとして、パターンマッチング連想の基盤になります。


 無数のパターンマッチングを超高速で実現する専用プロセッサとその上の汎用平行プロセッサをいかに設計していくか。この辺の絡みで、入試問題を解くシステムを考えていくと、大きなブレークスルーを得られる感じがします。





おわり