考察「脳について」(補稿)


 9月11日に「脳について」をアップしましたが、その後で運動制御について考察を深めてみました。記述がおおざっぱ過ぎてましたから。

 それで今回は次の点を踏み込んで、考えるところを記したいと思います。

(1)について

体の部品の位置と向き、運動属性は制御の基本となるデータです。これらは普通目で追えないものです。運動を学習するときには手先とかを見ますが、大抵は体が置かれた空間を見ています。手足の位置は、何となく分かるものなのです。何となくとは、つまり、

などからの情報から手足の状況を推測しているわけです。感覚情報は感覚神経のパルスセットとして表現されるでしょう。そこから、感覚情報を身体情報マップに変換する機構が必要になるといえます。

また、運動は、大脳運動野からの神経パルスが発せられて筋肉繊維一つ一つが制御されて発現します。随意運動の基点となるデータは言語とか意志とかの記号でしょうから、手足の位置と向き、運動属性で、運動は把握されているわけで、手足の位置と向き、運動属性を神経パルスに変換する機構が必要になります。

運動では、結局、次の図のようなフォーワード・フィードバックループを成します。

刺激効果テーブルとしては、この図の「変換」としている機構が適当なものをもつことになります。それと、予測制御しますから、「効果」を予測するテーブルが必要になります。予測制御は高速な運動を可能とするために見込みでプランした運動神経パルスを出力していく制御です。大脳内にはこれら機構に関連する機構がそろっているので(感覚野、運動野、連合野)、「変換」機構も「誤差評価」機構の大脳にあると予想されます。小脳はそのバックアップしているのでしょう。大脳が大きくなるほど、小脳も大きくなって、随意運動とか感覚、意志決定にも参画していると本にありました。

(2)について

手に棒をもつ。先ず手にボールをもつといったことは、手というオブジェクトに棒というオブジェクトやボールというオブジェクトを接続することだと、「脳について」で記しました。ソフトウェアの世界でそのことを実現するとどんな処理をすることになるでしょう。

手オブジェクトとボールオブジェクトはそれぞれの刺激効果テーブルを持っています。それで、別々に動いているときはいいのですが、この2つのオブジェクトを接合したらどうしなくてはいけないでしょうか。手とボールを接続して一つのオブジェクトを作らねばなりません。そのオブジェクトのもとで、手とボールの相互作用を記述するテーブルが必要になるのが分かると思います。

 

身体とその付属物は木構造ですから、一般論として、オブジェクトは自己の刺激効果テーブルの他に、他オブジェクトに作用する作業テーブルと他オブジェクトから作用される作業テーブルとを備えられるようになっているといえます。「作業テーブル」と呼びますのは、接続する相手によってテーブルが書き換えられるからです。身体、腕、手、指すべてこの統一したオブジェクトとして表現されて制御がなされます。

このような作りになっていますと、体側から順にボールまで、十分に予測制御ができるはずです。テーブルの精度の問題はあると思いますが、大枠としては良いと思います。

ソフトウェアでは次のようにして、オブジェクトの結合をすることになると思います。

(3)について

反射運動とか、体の平衡を保つような基本的な運動というものも必要でしょう。それは大脳を経由しないということで、高速な運動を実現します。それは、運動神経パルスと感覚神経パルスの間のダイレクトな接続で実現され、大脳からの制御をも受け付けるものです。そんな機構もロボットに必要かも。

大体が、大脳からの制御はおおざっぱで、きめ細かい制御は基本的運動として、大脳下位の脳幹の仕事だと思います(間違ってるかもしれませんが)。手とか指は明らかに大脳は精密な制御をしているようですが。

(4)について

小脳の仕組みを考えてみました。本によると、

ということです。

 このことから、平行線維は身体の配置パターンを担い、登上繊維が感覚神経パルスセットパターンを担うとすれば、その合流地点(プルキンエ細胞)を連想(長期抑制)させれば変換テーブルができるということですよね。無論登上線維の情報が運動神経パルスセットパターンであれば、身体性と運動パターンの変換テーブルができます。

 テーブルを学習したくなかったら、バスケット細胞で抑止すればいいのです。また、テーブルの種類を換えたければ、星状細胞とかで抑止を変えて選択すればいいのです。小脳には、さまざまなテーブルがあると推測します。


以上



小山明雄