■お酒からダイヤモンドが作れます
1986年(昭和61年)に広瀬洋一教授の研究グループが世界で初めてお酒からダイヤモンドを作ることに成功しました。実は、お酒からできるといってもお酒の中のアルコールを使っているのです。アルコールの中にはダイヤモンドのもとが入っています。この方法は、電球の中に水素とアルコールの蒸気を送り、普通の電球のように点灯させます。このときのフィラメント温度(約2200℃)でアルコールの蒸気を分解し、ダイヤモンドのもとを作るからです。できたダイヤモンドのもとは、フィラメントの真下の基板に積もってダイヤモンドとなります。このような方法で、日本酒だけでなくウィスキー、ビール、焼酎、ワインなどからもダイヤモンドが作れます。
■炎からダイヤモンドが作れます
炎からダイヤモンドが合成できることを世界で最初に発見したのは、広瀬洋一教授の研究グループです。1988年3月29日(昭和63年)に発表しました。
「ススのできるものなら何でもダイヤモンドになって良いはずだ」というのが我々の考えの基本です。炭素(元素記号:C)を含んだガスであれば、基本的にどんなガスでもダイヤモンドを作ることができます。ここでは、最も簡単にダイヤモンドを作ることができるアセチレン(C2H2)というガスを使っています。このガスは町の鉄工場へ行くと、鉄板を切断したり溶接するのに使っています。アセチレンは炭素をたくさん含んでいて、酸素の混ぜ方が少ないともくもくススを出し、酸素をだんだん増やしてちょうどアセチレンが燃えきる一歩手前にすると、ほどほどにススのもとを含んだアセチレンフェザーという特別な炎ができます。その中に基板を入れると、驚くほどの速さでダイヤモンドができるのです。この方法を我々は燃焼炎法と呼んでいます。
■簡易型熱フィラメントCVD法
1986年当時のダイヤモンド合成装置は約200万円もする大掛かりなものでした。そこで、ダイヤモンドを合成するために本当に必要な条件は何か、メカニズムの本質は何か、などを検討し、1988年に盛口襄教諭(渋谷教育学園幕張高校)と協力して、装置の不必要な部分を可能な限り取り除き、簡易化を図ったのが簡易熱フィラメントCVD法です。この装置は理科室にあるような試験管やゴム栓を使って組み立てたダイヤモンドの簡易合成装置です。幸いにも、この簡易のダイヤモンド合成装置は1994年4月から高校の化学の教科書に掲載され、全国の高校生に知らせる上で大きな役割を果たしています。
■超簡易型熱フィラメントCVD法
1988年に作成された簡易熱フィラメントCVD法は水素を使っているため、安全面から多くの高校は積極的には取り組みませんでした。これを解決する方法として、水素を用いないダイヤモンドの合成法を開発する必要がありました。広瀬洋一教授の研究グループは、現在までダイヤモンド合成に使われている炭素源とキャリアガスを検討した結果、メタノールのみをもちいてダイヤモンドが合成できることを1990年に確認しました。その後、簡易熱フィラメントCVD法の装置に改良を加え、新しい超簡易熱フィラメントCVD法 として1994年に論文として掲載しました。
■空き瓶を使った超簡易型熱フィラメントCVD法
1997年超簡易CVD法では、実際に中学生、高校生が装置を組み立て実験を行うためにはガラスの反応管が入手困難であることや、三角フラスコの上にガラス反応管が乗っているため装置全体が倒れやすく安全性に問題があった。これらの欠点を検討しさらに工夫を加えた結果、空き瓶を用いたダイヤモンド合成装置を組み立てることができました。なおこの内容については、春の応用物理学会関係連合講演会にて発表しました 。
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