シルビア通信1 >> 小ネタ >> 戦いの四半世紀

踊る剣士

戦いに勝つ瞬間は、戦いが始まる前にある。

F.W.ルイス

 20世紀は「戦争の世紀」でした。同様に、私(仮面マスク)の生きてきた四半世紀もこれまた戦いの人生でした。ある時は 蟻の巣に爆竹を埋め込み、またある時はゲームセンターで並んで待っている自分の前に割り込んできたガキを怒鳴ったり、そしてまた ある時は部屋に迷い込んできたハエを必死で追いかけ回したり……って自分より弱いやつばっかだよ、こりゃ。
 今回はそんな数限りない戦いの中から、ベストバウトをチョイスして皆に紹介しちゃうぜ! あっ、かっぽれ、かっぽれ。



保育園時代のベストバウト
 保育園に通う頃から格闘センスの良かった私は、名うての格闘家達の秘技を1回見ただけで自分のものにしていた。 中でも得意にしていたのはジャッキー・チェンから盗んだ『蛇拳』で、右手を蛇のようにしならせれば、大抵のクラスの女子共は「キャー、キャー」 と叫びながら逃げまくっていた。私はその様が楽しくて、来る日も、来る日も、クラスの女子を蛇拳で追いかけ回していたのである。

 そんなある日、私は担任の保母さんに呼び出しをくらった。

「仮面マスク君。クラスの女の子をイジメちゃだめでしょ!!」
「ごめんなさい……」

 蛇拳、女子のちくりにあえなく散る!

<1敗>

小学生時代のベストバウト
 入学したての1年生。私は友達になったヒデキ(あだ名「ひじき」)と一緒に下校していた。

「なぁ、なぁ、仮面マスク。お前クラスに好きな奴とかいる?」
「えっ? い、いないよ!!」(←焦り過ぎ)
「あー、いるんだ。絶対いるんだ。誰だよ、言っちゃえよ」
「えー、恥ずかしいから嫌だよ……」
絶対誰にも言わないからさ。なっ!」
「サ、サヤカ(仮)さん……」

 次の日。クラス中に私の好きな人が知れ渡っていた

 ぼく大泣き。

 友達に裏切られた孤高の戦士、ここに散る!

<2敗>

中学生時代のベストバウト
 どこのクラスにも変わり者はいるもので、私の中学時代のクラスにも変わり者はいた。名をタケシ(仮)と言い、家でお手製の 武器を製作してはそれを学校に持ち込んでクラスの皆を困らせていた。

 私はそんな武器職人タケシ(仮)にお灸を据えてやるため、彼の工具箱に家庭科の授業で余った長ネギを放り込んでやった。

 この作戦は成功し、タケシ(仮)は、

「工具箱が臭いよ〜」

 と泣き叫んだ。

 傍らで笑い狂う私はその場で担任から職員室につれていかれ、これでもかと逆にお灸を据えられた

 クラスの為にと立ち上がった獅子、無惨に散る!

<3敗>

高校生時代のベストバウト
 日本通運でアルバイトをしていた私は、その日、遅刻ギリギリで会社へと急いでいた。日本通運では仕事前に「日通体操」という 名前からして恥ずかしい準備体操をやらされるのだが、それまでには何とか間に合わなければならない。

 死ぬ思いで会社に到着した私は、急いで作業着に着替えると、今まさにはじまろうとする「日通体操」の場へと滑り込んだ。

「間に合った……」

 私が息を切らしながら体操をしていると周りの人間がひとり、またひとり、とこちらを振り向きクスクスと笑っている。

「なんだ?」

 怪訝な顔をしていると隣のお姉さんが、

「キミ、作業着上下とも裏返ってるよ

 現代に生まれた武士、洋服に散る!

<4敗>

 こうして振り返ってみると、私の人生負けてばっかりです。つまり自分、負け犬ッス(グスン)。

 みんな帰れ。


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