Q ピロリ菌とは何ですか

 ピロリ菌とは、正しくはヘリコバクター・ピロリと呼ばれる菌です。
胃の中に住み、胃や十二指腸の病気の原因になることがわかってきました。この菌は、らせん状で、その端に鞭毛と呼ばれるひげを数本持っています。

Q 胃の中に菌が住んでいるというお話ですが、胃には強い酸があるのに、その中で菌が住めるのでしょうか

 実は、以前は専門家の方も、胃には菌は住めないと考えていました。ところが、この菌は少し変わった性質をもち、強い酸のなかでも生きていたのです。
 胃には胃液があり、これは非常に強い酸で、普通の菌は住めません。ところがピロリ菌はウレアーゼと呼ばれる特殊な酵素を持っていて、自分の周りにアンモニアを作ります。このアンモニアはアルカリ性ですから、酸を中和しピロリ菌の周囲は、中性の環境が出来るのです。そしてこのように胃粘膜の表面や細胞の間で生息しているのです。

Q このピロリ菌は、いったいどのようにして感染するのでしょうか

 この菌の感染経路については、まだ不明な点もあるのですが、口を介した感染が大部分だろうと考えられています。具体的には
 (1)口―口感染
ピロリ菌に感染している人では、歯垢や唾液にも、この菌がいることがわかっています。そして西アフリカで行った調査では、母親が幼い子供に食事を与えるとき、あらかじめ咀嚼してから与えることにより、子供への感染が増えたというデータがあります。

 (2)糞―口感染
感染者の糞便中にピロリ菌がいますので。これが水や食品を汚染し、口から感染する可能性があると考えられています。このルートは上下水道が完備され、衛生面での生活が改善されれば減少するでしょう。
 (3)媒介感染
家畜やペット、蝿などを介して感染するルートも有るだろうと考えられています

Q ピロリ菌はどんな病気を起こすのでしょうか

 ピロリ菌への感染は特別なことではありません。60才以上の人では、半数近くの人が感染していると言われています
 ピロリ菌が関係する代表的な病気としては、つぎのようなものがあります。
(1)急性胃炎慢性胃炎
(2)胃潰瘍十二指腸潰瘍
(3)胃癌

 ピロリ菌が胃粘膜に取り付くと、毒素をだし胃の粘膜を荒らして胃に炎症を起こします。さらに胃の壁は酸の攻撃を受けやすくなり、潰瘍を作ってしまいます。

Q ピロリ菌を退治すれば胃炎や潰瘍が全て治るのでしょうか
 ピロリ菌を退治することを除菌と呼びますが、除菌に成功した場合でも胃炎や胃潰瘍が100%治るわけではありません。ピロリ菌以外にもタバコやアルコール、痛み止めなどの薬も胃炎や潰瘍の原因となります。さらに精神的なストレスなども原因となることが知られています。
 ただし十二指腸潰瘍の患者さんの場合を例に取ると、ピロリ菌を除菌しない場合の一年後の再発率は、70%〜80%あるのに対し、除菌した場合の再発率は5%以下だったするデータがでています。
Q ピロリ菌は、胃癌の原因にもなっているのでしょうか
 大規模調査の結果、ピロリ菌が胃癌の原因の最大の原因であるとの結論が出ました。日本でも2013年2月よりハリコバクター・ピロリ胃炎に対し、保険診療で除菌が可能になりました。
Q 除菌療法とは、どんなことをするのでしょうか
 除菌とは、胃の中に住み着いているピロリ菌を退治することです。
 胃潰瘍や十二指腸潰瘍と診断された患者さんに対して、まずピロリ菌がいることを確かめます。ピロリ菌がいることが確かめられたら、抗生物質を2種類と胃酸を抑える薬を1種類の計3種類の薬を7日間服用します。
Q どんな方が除菌の適応になるのでしょうか

 ピロリ菌に感染している人が全て除菌の対象になるわけではありません。
 除菌の対象となるのは
(1)胃潰瘍
(2)十二指腸潰瘍
(3)胃MALTリンパ腫
(4)特発性血小板減少性紫斑病
(5)早期胃癌の内視鏡的治療を行った後に残っている胃ピロリ菌感染

(6)ピロリ菌感染のある萎縮性胃炎
などの病気と考えられています。
以前は胃潰瘍と十二指腸潰瘍の患者さんのみが、保険適応でしたが、現在は上記の病気の全てが保険適応となります。ただし、除菌の前に必ず胃の内視鏡検査を受ける必要があります。 

Q 内視鏡検査を受けない場合は除菌できないのでしょうか
 この場合は、まだ保険適応がありません。
例えば血液検査でピロリ菌感染があるので、除菌をしたいといった場合、過去1年以内に胃内視鏡検査を受けており、慢性胃炎の診断があれば、保険で除菌ができます。内視鏡検査なしで除菌したい場合は保険の適応外となり、全額自費で治療することになります。 
               

ホームページへ戻る

               
健康広場
今回の健康広場は《ピロリ菌と胃十二指腸の病気》についてのお話です。