―はじめに―


ようこそジグヘッドマガジンへ。

ジグヘッドマガジンとかいいつつ、あまりジグヘッドと 関係ない話が多いかと思います
が、基本的にルアーフィッシングなら何でもOKという 姿勢でやっていきますので、
みなさんよろしくお願いします。

…時折ルアー以外の釣りもあるかもしれませんけど(^-^)
釣りには違いないんだからいいじゃん、ということで。
それどころか、釣り以外の話もあるような(^-^)

それではジグヘッドマガジン をお楽しみください。



幻のジグヘッドマガジン発掘!

これが同人誌バージョンの表紙だ!

外道の王者だアナハゼ君 !?  -平成11年11月22日釣行記 -

それは前日の夜、突然決まった。何時もの様に、他愛のない電話からだった。  仕事の都合のため基本的に平日が休日に なることの多い僕にとって、一緒に同行してく れる釣り友達を探すのはいつも一苦労であるのだが、ま、今回に限っては中学時代からの 友人である甘利和宏氏 (以下敬称略、甘利 ) が空いていると判っていたので、携帯へ電話 した。『おう甘利、明日どうする?』  『あ〜明日か、バスでもやるか』  我々はここ数年、釣りといえばバスフィッシ ングの事を示すくらい、バスにハマっている。 もちろんこの様な話の流れになっていくことは 至極当然とも言えた。ただ今回だけはいつもと違い、ちょっとした目論見がある。それは僕が最近目覚めつつある海のルアーフィッシング だ。その事をさりげなく?話題に交えていく と、『正直に言え、海に行きてえんだろ?』  どうやら思いっきりバレバレだった様だ(笑) ただ、僕は一日のみの休日、甘利は前日のワカサギ釣りで多少の疲れもあると云う事で、 釣りへの出発時間を少し遅めにして、朝7時頃に、甘利の家へ迎えに行くということで合意し、電話を切った。さて、これから道具の支度をしなくては(笑)

不安だ、最初からトラブル続き !?

  釣行日の朝、寒さで目が覚めた。さすがに11月も終わりになるという季節である。朝の冷え込みが一段と厳しくなってきているようだ。 まだ覚醒しきっていない頭と身体をムリヤリ動かして身支度を整える。家の外へ出て、クルマに乗り込もうとしてある異変に気がついた。 『…窓が凍ってる』  真っ白に覆ったガラスの霜を取去るのはちょっとした一仕事であった。もう、冬が近いんだなと感慨に耽りながらもガリガリ削っている と、その作業中に甘利から電話がはいる。 『おう、あとどれくらいで家くる?』  すでに約束の時間であった。だけど何も7時ジャストに連絡しなくてもいいだろ(笑) それはともかく少々遅れる旨を伝えてからクルマ を走らせる。元気有り余りすぎて危なっかしい登校中の小学生に気をつけながら国道へ合流した。 …そこで待っていたのはいわゆる通勤ラッシュの渋滞であった。普段の出社時間が9時30分頃である僕にとっては、とてもじゃないが 考えられない、耐えられない、拷問にも匹敵するであろう未知の体験である (ちょっと誇張気味か。本当はそういう時間帯だと云う事を完全に忘れていただけというのが正解 )そこで今現在の状況を甘利に電話すると、 『ま、ゆっくり来いや』 多少、あきれたような口調でありがたい返事をいただく。が、それではいつまでたっても埒がいかないのも事実なので、裏道を駆使し、なんとか甘利宅に到着する。時刻はあと10分もすれば8時になろうという頃であった。 気を取り直し甘利を乗せて、さあ出発だ。

 また国道に合流するが、渋滞の様子にそれほど変化はなかった(つまり、まだまだ道が混んでいる )そんなときは得てしてバカ話が始まりやすいものである。まずは前出の甘利が参加したというワカサギ釣り大会の話から訊いてみることに、すると彼はやや照れたように、 『いや〜寝ちまったよ』 ???釣りに行って寝るとは一体どういう事なのか、頭上を疑問符が浮上し、ぐるぐる回転をはじめる。 『ワカサギ釣りの船ってな、屋形船だから暖房が効いてて暖けえんだよ』  へぇ〜、そうなのか。 『それでな、まぁ酒なんか飲むわけだよ』  ほぉ〜、そいつは優雅だね。 『ほとんど宴会だよ。まぁまぁ一杯とかなんとかいって、みんなすすめるわけだ』  まぁ、ありがちだね。 『そうして飲んでるうちに、朝早かったしさ、 ポカポカあったかいし、で、いつの間にかガンガンと熟睡しちまったよ』 ふむふむ、なるほど、それで? 『ポンポンと肩を叩かれて起こされたんだよ、甘利ちゃん、あと10分で終わりだよって。でさ、 あわてて俺の竿をみたらさ、仕掛けがもう付いてねえんだよ。さっさと片付けられちまったんだよな』 わはは、それ絶対嵌められたんだよ。 『かもしんねぇな。だから飲んで、寝て、ただ帰って来ただけだよ』 何しにいったんだよ(笑) 『だろ、なんか疲れちまった』 どう話を聞いても、ゆったりとくつろいできたようにしか思えないのに、それでも人は疲れるものらしい。きっと言葉の裏には別の意味が含まれているのだろう、釣りとは関係のないあたりで。例えば飲みすぎたとか、寝過ぎで頭が重いとか(笑) そんな甘利の失敗談だか、ある意味、武勇伝だかを訊いているうちに、ようやくアップルラインにはいった。ここまでくれば少しはクルマのスピードも速くなってくるので (道が空いてくる) 気分的に楽になる。だが、まだまだ道程は果てしなく遠い。

 ワ〜プ!

 前のクルマがノロノロ運転だったり、信濃町近辺で何箇所も道路工事があり片側通行を余儀なく強いられ、その都度停止して待たねばならない、などという遅々として進まぬ道中のことは、もう思い出したくないので書かないことにする(笑) それはともかく、ようやく上越までやってきた。いや〜長かった、ホントに長かった。もう10時30分になろうとしている。なんだか時間がだいぶ限られてきているような気がしないでもないが、とりあえずCMでも御馴染みの本間釣具店に寄ることにした。 ここでジグヘッドなどの仕掛けと、サビキやコマセを買い求めていく。え?なんでサビキ仕掛けを買っていくのかって?そりゃまあ、せっかく海に行くんだから、お土産も釣っていかなきゃね。余談だけど、この日は99年度年間チャンピオン小山っちが喜びそうなバルサ50がいっぱい入荷していたよ。僕ら二人は買わなかったけどさ (だってオリジナルサイズだったし。そんなデカイの投げるロッド持ってな いしね) 次にセブンイレブンで食料の買い出し。僕は朝食と昼食を、甘利は昼食を買う。その違いの訳は今朝、クルマが甘利の家に着くまで時間がかかっていたため、その間に彼は朝食を食べてしまった、という実に単純明快な理由である。悪かったね待たせちゃって(笑) あとはクーラーに入れる氷を用意して、いよいよ釣り場へ向かうことにする。目的地は何度か良い思いをしている能生だ。

 そのとき気まぐれで、いつもと違う裏道を通ってみることにしたのだが、これが失敗だった。なんだか細い路地が延々と続くし、どんどん見知らぬ街中に入っていくし、それでも海沿いを走っていれば問題はない、と思っていたが、だんだん海が見えなくなり山道を登っていくし(笑) でもまぁ、道なりに走っていたらうまく国道に合流したので結果オーライ。

 ─教訓、知らない道は無闇に走るな─

 『当たり前だろ』 ←甘利のツッコミ。さて、なんだかいろいろと寄り道をしたような気がするけど、ようやく目指す能生に到着し た。そこで我々を待受けていたものは、

        車           車           車          車
        人           人           人          人

 とにかく、見る者のやる気を喪失させるのには、充分有り余りすぎるほどの釣り人の集団であった。絶対、魚より人の方が多い! ま、それはあり得ないとしても心情的にはそ んな感じ。大体において、もう竿を出せそうな場所が、まったく見当たらなかった。それにしても何故こんなに人が? 『やっぱ昨日が日曜で、明日が勤労感謝の日だろ?みんな三連休にしたんじゃねぇの?』 そうか、世間様はそういう休みの取り方をしていたのか。謎が解けたね。 だからといって、我々がこの場所で釣りが出来るようになるわけでもないし、万が一竿を出せたとしても、もはや釣れそうだという気が全くしなかった。 『仕方がない』 我々は肩を落とし、すごすごと退散せざるを得なかった。戦いが始まる前から勝負に負けていたのでは話にならない。気分を切り替えて他所へ行くだけだ。

─追伸、ほとんどのクルマが『長野』『松本』ナンバーであったことを報告しておく。休日に考えることはみな同じらしい─

 『どうすんの?』 『どこ行くか、まかせるわ』 もう時刻は11時をまわろうとしている。こうなったら、とっておきのポイントに向かうしかない。その場所は、『浦本漁港』 他の釣り場が、どんなに混雑していようが必ずといっていいほど空いている場所だ。しかも、良く釣れる。 ─もう、ここしかない─ 浦本を目指してクルマを走らせた。

今度こそ、パラダイス!?

 我々は浦本漁港にやってきた。思った通り、 釣り人は数人しかいなかった。 『こいつはいけるぜ』 とばかりに道具を用意する。まずはお土産を確保するためにサビキから始めることになった。ここまで来て、何も釣れなかった、じゃ面白くないしね。 とりあえず海を覗き込んでみると、いるわいるわ、これで釣れなきゃどうかしている。それぐらい小魚が群れなして泳いでいた。現金なもので、俄然やる気の出てきた我々二人は、早速、仕掛けをセットする。

 ─ビン、ビン、ビン─

 サビキを投入して間もなく、穂先が小刻みに揺れる。早くも待望のヒットだ。だが、不可解にも我々のとった行動は、 『俺、小便してくるわ』 甘利がコンクリート塀の隅に向かって歩き出す。 『メシ食おうっと』 僕は僕で菓子パンの袋を破り、ペットボトルの烏龍茶の蓋を開けて食事を始める。腹が減っていたので、こんな粗末な?物でも美味く感じる。 『あ、俺も食うかな』 小便から帰ってスッキリした顔の甘利はクーラーボックスからキンキンに冷えたビールを取り出し、喉を鳴らしながら飲み始める。いつもの我々なら、釣りといえば目の色変えてロッドを振りまくるはずなのに、今日は一体どうしたというのか!?

 答えは簡単。サビキは黙ってても勝手に釣れるから。しかも、ほっとけばほっとくほど鈴なりに針に掛かるという。一種の漁ともいえる釣り方だから。調子の良いときなどコマセが無くても釣れてしまうぐらい(笑) いや、ホントに。ウソだと思うなら、あなたも一度コマセ無しでチャレンジしてみてください。『コイツらアホだな ぁ』と、釣れた小魚に憐れみさえ覚えること間違いなし。特にアジ。

 一休みした後は、ようやく本腰を入れて釣ることにしたのだが、これがまた落ち着かない。ろくに休む間もなくアジが掛かるものだから、立ったり座ったりでまぁ忙しい。コマセをカゴにつめて、魚を針から外してクーラーに投げ込んで、と単純な作業の繰り返しが続くため、我々二人も口数が減ってくる。早い話が『釣りに飽きる』のだ。

 …ここで話は変わって、この日より二・三週間ほど前まで戻るが、やっぱり甘利と二人で海釣りに来たときの事。その日は最初、柏崎へ行ったのだが、思うように釣果があがらず (本当はハゼを釣ろうと思ってた。だけど釣れるのはボラの子、クロダイの子、その他素性の知れないサカナの子、どれも五センチクラスの雑魚ばかり) しかも波風が強くなってきたため、少しでも条件の良い場所へ行こうと能生まで移動した。ここなら完全に湾の中を攻めることができるし、波風の影響など無いも同然だからだ。 …でもサビキ(笑) 確実に釣れるからね。 そしてクーラーにお土産が程好く埋まっていった頃、ふらりと一人、いかにも地元の人だという感じのオジさんが我々の側までやってき た。 『どうだい、釣れてるか?』  片手にはバケツを二つ。釣り竿は年季の入った頑健そうな投げ竿を一本。そしてなぜか 柄の長いタモを持ったまま話しかけて来た。 『いや、まぁボチボチですねぇ』  『何が釣れた?』  『アジとサヨリですね』  そんな会話をしてる間に、ネリックスをつけた針に魚が掛かった。わりといい引き方をしている。が、抜き上げた魚体を見たオジさんは言った。 『あぁ、それ触らんほうがイイぞ』 それもそのはず、ヒレというヒレ全部に毒を持つ魚『アイゴ』だったからだ。 『言われなくても触れませんヨォ』  ヒレさえハサミ等で切り取ってしまえば問題はなく、食べると淡白な食感で美味しい魚だというのだが、手のひらサイズで、しかも一匹だけではどうも持って帰る気がしなかったので、即リリースすることにした。君子危うきに近寄らず。 こうしている間に、準備の終わったらしきオジさんはコマセを撒きはじめた。だが、どういう訳か手に釣り竿を持っていない。

─そこで我々は信じられない光景を目撃することになる─

 オジさんはコマセを撒いた後、水面を凝視 し、鋭い目付きをしたかと思うと、タモを手に身構え、まるで素浪人が時代劇の悪人を袈裟切りにするかのような俊敏な動作で、上段から海面を叩きつけた。一瞬の後、引き上げ られたタモの中には型の良いサヨリが10匹以上は収まって銀色に煌いていた。電光石火の早業だ。オジさんは得意そうな笑みを浮かべる。 『!』 『!』 我々二人の声は言葉にならなかった。オジさんが二度三度と同じように魚を獲り、無造作にバケツへ放っていくのを呆然と眺めているうちに、ようやく感嘆の吐息をつくことができるようになった。 『うっわすげえなぁ』 『一匹一匹釣っていくのが馬鹿馬鹿しくなっちゃうよ』 サビキでは針が六本だとすると、いくら頑張っても一回に最大六匹。だが、オジさんはタ モをたった一すくいするだけで10匹以上もの魚を獲ってしまうのだ。しかも見ているとサヨリだけを選んですくっている。水中には圧倒的な数のアジが泳いでいるにも関わらずだ。吸いこまれる様にサヨリがタモに飛び込んでい く。  まさに神業 ─ だが、驚くのはまだ早かった。 投げ竿に、イカツノの針を十倍ほど大きくしたようなものをセットし、足元へ沈めたかと思うと、しばらく間を空け、竿を大きくシャクっていた。数回繰り返した後、抜き上げられた仕掛けには、我々がまだ姿も見ていないカワハギやアイナメが掛かっていた。無造作に、ただ竿をシャクっているだけで魚が獲れてしまうのだ。いったい、どうしてこんなことが可能なのだろう? もちろん、その間我々だって釣りはしているのだが、オジさんの匠の技に度肝を抜かれたか、あまり調子がでてこない。ポツポツと釣果を積み上げていくが、オジさんのペースに追付くのは不可能だった。スターウォーズのジェダイの騎士の如く、理力でも使っているのだろうか? 結局オジさんは30分ほどでバケツ二杯を溢れんばかりに魚で埋め尽くし、飄々とした足取りで帰っていった。 我々にとっては悪夢にも思える時間ではあったが、なかなか忘れることのできそうにない非常にインパクトの強い出来事でもあった。

 その時の様子が、まだ脳裏に焼きついたままだった我々は、今回ちょっとオジさんの技に挑戦してみようじゃないか、ということでタモならぬアミを持ってきていた。甘利が野尻湖でエビを掬うのに活躍した五百円玉1枚でお釣りの出そうな、みるからに安っぽいアミである。ほら、よくあるでしょう?子供たちがドブ川や池に立ちこんで、オタマジャクシやゲンゴロウ相手にギャアギャアうるさく振り回しているようなイメージがある竹の柄のついたアミ。それを今日のために、わざわざクルマに積んできたのだった。果たしてどうなるのか?

 『ちょっと無理っぽいな』  『予想以上に柄が短かったな』 そう、せっかく持ってきたアミだったが、堤防から這うように身体を迫り出して、なおかつ腕を目一杯に伸ばさないと海面に届かないのだった。これでは思うようにアミが動かせな い。 『まぁ、やるだけやってみようか』 甘利がとりあえずアミを水中に差し込んでみる。すると、  ─ピューッ─  そんな擬音が聞こえてきそうなほどのスピー ドでアジが散っていく。コンマ何秒と思われる 素早さだった。たった今まであれほど群れていたというのに、最初からこの場所には存在しなかったかのように何もいなくなった。『シーン』 とでも表現したくなるような静寂感が一瞬の内に訪れてくる。 『マジかよーっ』 サビキ仕掛けには、いとも簡単に飛びついてくるというのに、アミの場合は、ほんのちょっと先が水に触れただけでサカナが逃げてしま うのだ。─ いや、思いっきりサカナから我々の姿が見えている姿勢になっているのも一つの原因なのかもしれないが。それにしても反応が早すぎるよ、コレ。 それでも少々燃えてきた、というか意地になった、というか。せめて一匹くらいは獲ってみたい、という欲望に突き動かされて作戦を立てることにする。ほら、誰にでもあるでしょう? 自分がうまく出来ない事には、絶対に成功するまで挑戦を続けてしまう情熱のようなものが。 それが今、我々二人の間に訪れたのだった。 だけど思いついた作戦といっても非常にシンプルなものである。まず甘利がアミを水中に入れっぱなしにする。一時サカナはいなくなってしまうが、そこへコマセをバラ撒き、強制的に寄せる。集まってきたところでアミの中 にコマセを入れて、つられるようにサカナが飛び込んでくる、といった要領だ。これならう まくいくだろう、ということで実行に移ったのだが思わぬ誤算があった。 確かに途中までは思惑通りにいったのだが、肝心のサカナが近くに寄ったとき、ほんの少しでもアミを動かすと、あっという間に逃げ散ってしまうのだ。何なんだよ一体。 何回か繰り返してみるが、ことごとく失敗してしまう。サカナがアミの近くにいるときに素早く抜き上げてしまおうとしてもダメ。水中でのアミを動かす抵抗感は想像以上に重たいのだ。あ、一回だけヒレがアミに引っ掛かったのがいて、喜び勇んで引き上げたことがあったけど、見事に空中で暴れ、また海に戻っていきました。う 〜ん、自然相手にこの装備ではうまくいかない。あっさり敗北を悟った我々は、また地道にサビキ釣りを続けることにした。釣った方が早い。それにしても、あのオジさんのテクニックは凄すぎる。

 サビキ釣りの方は相変わらずのペースで黙々と続いているのだが、それはともかく先 刻から我々二人の隣で釣りをしている親子連れが何か気に触るのだ。親子といっても子供の方は、もう二十歳はいっているとみえる年頃ではあったけれど。 それで何が気にかかるかというと、とにかくう るさい。たかだかアジの一匹釣れただけで 『オッシャーッ!』『やりーっ』 『来たー釣れた ーっ』 などと絶叫しまくるのだ。もうテンション上がりっぱなしな感じである。 彼等の釣り方を見ていると、どうも本来はサヨリでも釣りに来たらしく棒ウキをつけて釣っているのだが、問題なのはそこから下の方である。普通なら道糸の先にハリスを結び、最後にハリが付いており、その途中にガン玉やハリス止めなどが付いていたりする、といった感じで大半の人は仕掛けを作ると思われるが、彼等の場合は少し変わっていて、道糸の先には赤い二股に分かれた部品が結ばれ、そこから二本、ハリを結んでいるといった塩梅である。 なんだテンビンか。と思う人もいるかもしれないが、それは違う。これ、どうも海釣り用の道具じゃなくて、ヘラブナ釣り用の仕掛けだと思えるのだ。先ほどは棒ウキと言ったけど、実はヘラウキなんだもん。きっと親父さんがヘラ師なんだね。 この日はサヨリがほとんど寄って来ておらず、釣れるのは9割以上がアジという状況だったので、この親子の釣り方は見ていて非常に効率が悪い。コマセカゴを付けてサビキにすればいいのに、いちいち柄杓でコマセを撒いてから仕掛けを投入している。それでいて二本のハリにサカナが掛かることは殆どなく、たいてい一匹しかあがってこないのだ。 『よぉーし』 アジ一匹。  『へっへー釣れたぜっ』 でもアジ一匹。  う〜ん、それでも楽しいのだろうか?人それぞれだからいいんだけどね。 だけど、この親子はイワシが釣れると地面に放り捨てていたのが嫌だったなぁ。もったいないよね、美味しいのに。それこそ何十匹と捨てているからイワシが山積みになっているという。いらなきゃ海に逃がせばいいのにね。釣り人のモラルの低下を象徴しているような出来事でした。うるさいうえにマナーも悪いな んて、どうしようもないじゃんか、ねぇ。  

はじまるか、ジグヘッド!?

 もはや、我々は完全にサビキ釣りに飽きていた。本当に殆どアジしか釣れないし、型は小さい奴しかいないし、クーラーボックスの中は埋まっていかないし (アジが小さすぎてね) いつになれば切りのいいところだ、という判断ができないのである。おまけにまだたっぷりとコマセも余っている。つらい。

 隣の漁協の方から一匹ネコが歩いてきた。どういうわけか漁港にはよく猫がいる。そこで小アジを放ると素早く駆け寄って咥えていく。その様子が面白かったので何匹かご馳走してあげた。きっとこういう風にエサを貰えるからどこの漁港でもネコが住み着いているのだろう。そうに違いない。

 ふと足元に目を移すと、ふらふらと浮かび上がってくるサカナが見えた。コイツは?  『おい見ろよアイナメがいるぞ』  『マジで?』  あわてて甘利も覗きこむ『ホントだ〜』  やっとアジ以外の姿を見ることのできた我々二人は妙に興奮した。─ ジグヘッドで釣れるじゃん、というわけである。 こうなってくると、せっかくのお土産稼ぎのサビキ釣りだが手につかなくなってくる。だが、コマセを処分しないことには釣りを変えることができない。そこで甘利が云った。 『とにかくコマセを終わらせてジグヘッドやろ うぜ』 そうしてコマセカゴにコマセをムリヤリ特盛りに詰込んだのである。やる気満々だね(笑)

 『よし、そろそろ始めるか』 かなり強引にサビキ釣りを終わらせた我々はタックルを変え準備をすることに。なんと甘利はこの釣りのためにハートランドZを用意していた。なんかもったいないような気もするけど気合はいってるね〜。 ここで簡単な仕掛けの紹介。まずラインは 二人ともフロロの4ポンド、そして1/8ozのジグヘッド、そして使用ワームは僕がエコギアのパワーシラス・パールホワイト。甘利はエコギアのグラスミノーS・グローグリーンバック。これでもうバッチリだね。こういうシンプルな仕掛けの釣りっていいねぇ。

 さて、まずは先程アイナメを目撃したポイントにジグを落としてみる。フリーフォールで底までつけ、反応がなければ軽くあおって再び落とす。いわゆるリフト&フォールである。これを繰り返せば根魚は比較的簡単に釣れるであろう、という目論見である。ところがまだ一投目だというのにワームが落ちていく途中でラインが走った。もうアタリだよ。  『おし来た!』 まだ心の準備が出来ていないうちから釣れてしまったので、少し焦ったがガッチリとフッキングに成功。グイグイとアイナメ特有の首を振って潜ろうとする動きがロッドに伝わってくる。なんか楽しい。 ともあれ最初の一匹なのでバラさないよう慎重にやりとりし、一気に抜き上げる。大体20センチ程度のアイナメであった。 『甘利〜釣れたぞ』 甘利は水面を覗きこむようにしてジグを落としているところだった。だが集中しているのか呼ばれたのに気付かなかったようなので、もう一度声をかける。『おお』 ようやく振り向いた甘利はアイナメの魚体をみて感嘆の声を漏らす。 『へぇー、もう釣れたんか、見せて』 そして釣り方を訊いてくるのでリフト&フォールで、と説明する。あとはひたすらジグを撃ちまくっていくだけだね。 ところがなかなか釣れない。いや、アタリはあるのだけれどサカナが小さいのかうまく乗らないみたいだった。 『おっ釣れたぞ』 甘利がリールを懸命に巻きあげる。彼のファーストヒットは? 『…』アナハゼであった。15センチぐらいのなかなか良いサイズだ(笑)甘利は少しガッカリしたようではあったがジグヘッドで釣れた、という事実に気を良くしたのか、『おもしれぇ〜』 と云い続けていた。そんなに喜んでもらえると、こちらも嬉しくなるよね。ただカラフルなアナハゼの魚体に触れたくないのか、コンクリートの角を利用してジグヘッドを押しつけながらリリースしているのが可笑しかった。まあ、確かに見馴れないと嫌かもしれない。

 さて、甘利も釣れたことだし僕も本腰いれて釣っていこうか、と思うのだがどうしたことか釣れなくなってしまった。サカナを確認するために、アタリがあったとき、そぉ〜っと持ち上げてみるとワームをつついていたのは5センチく らいの雑魚にフグであった。なるほどこれじゃ釣れるわけないよな〜。 納得はしたものの、それでは釣りの意味がないので片っ端からジグを落としていく。コンクリートの繋ぎ目、海草の切れ間、停留している船の陰など、目についたポイントは次々に試していく。

『おっしゃー!釣れたぞー』サビキ釣りの人の間をぬってジグを落としていた甘利が誇らしげに魚体を掲げる。20センチに少し足りないくらいのアイナメであった。おめでとう!甘利には初体験のアイナメの引き具合が心地よかったらしく、また『おもしれぇなー』と盛んに口にする。その調子でどんどんいこうじゃないか。
『おっ』船を繋いでいるロープの周りにカーブフォールさせたときにアタリが。すかさずアワセるとバッチリ掛かったようだ。ロープに巻かれないように一気に抜き上げると、釣れたのはクロソイであった。早速、甘利が見に来る。『へ〜、こんなのもいるんだ』 うん。他にはカサゴもいるし、春になればメバルも期待できるんじゃないかな?

だが、我々が好調に釣れたのもここまでだった。さっきまでは煩いくらいにあった小物のアタリすら遠のき、フグもワームを齧ってこなくなった。そこで二人して漁港の中を隈なく歩きまわるが、ジグによさそうなテトラ周りはエサとサビキ釣りの人たちに占領されていて入れず。仕方なく近辺で狙ってみるが、アイナメの子らしき3センチぐらいのサカナが釣れたに留まる。しかし、よく釣れたなこんな奴。ちゃんとアタリがあったんだよ。 見込みが無さそうなのでまた移動。

だんだん肌寒くなってきた。いつのまにか夕方4時をまわっている。今度は対岸の外海に面したテトラの方へ向かったが、残念ながらテトラへ渡ることができない。遠くから見ていたときは気付かなかったのだが、足場からテトラまでだいぶ離れていたのだ。あきらめて周辺を探る。海草がかなり多いのでスイミングでないと、すぐに根掛かりを起こしてしまう。しかしスイミングには一切反応はなかった。もちろん足元も丹念に攻めてみるがコツンともいわない。ジグヘッドを何個か紛失していくだけである。もちろん甘利も似たような状況で、二人とも釣れないことには変わりはない。寒さもだんだん厳しくなっていくし、アタリもないことだし、今日の釣りはこれまでだと判断する。あたりはもうすっかり暗くなりはじめていた。

次はおそらく来年になると思うが、またロックフィッシュに挑戦したいと思う。

 

本日の釣果  アジ…数える気おこらず  アイナメ…2匹  クロソイ…1匹


−あとがきのようなもの−

上記の釣りから帰る道中に、甘利と適当なバカ話をしているときに、僕が『海のルアー雑誌はいくつか発行されているが、どれもシーバスばかりでロックフィッシュの専門誌ってないよね』などと云ったところ『ジグヘッドマガジンとか?あるわけねーじゃん』と言い返されたため、それじゃ自分でつくってしまうか?というように冗談で答えたのがいけなかった。後日、本当に作り始めてしまったのだ。もちろん最初は仲間内で読めればいいや、としか考えていなかったので、紙ベース。いわゆる同人誌の形式で作っていたのだが、ワープロを打つのが遅いため、すぐに飽きてきてしまう。しかも1ページを三段組みにしたためか、いくら文章を入力しても終らないのだった。それなのに甘利には催促されたりしたため、いっそのことHPにしてしまおう。と突然思い立ったのである(笑) それから見よう見まねでHTMLのタグなどをいじり、なんとかHPをアップしたときには上記の釣行から、すでに半年近く経っていたという(自爆)なんとも気の長い話であったなぁ。

そして今回、未完成だった同人誌バージョンの原稿をなんとか最後まで入力し、ようやく公開することができました。まあ、元々が同人誌用ということで文章がやたら長いですが、その辺はご容赦ください。 それとある意味『ジグヘッドマガジン』の産みの親ともいえる、あまりっちこと甘利君にも感謝。君とのバカ話がなければ、おそらく作ることは無かったからね。まあ、これからも適当にヨロシク。これからも皆さん気軽に楽しんでください。


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