1.雲切目薬の添加物について

あるお客様からお問い合わせがありましたので、雲切目薬の添加物についてお答えしたいと存じます。
尚、この情報は雲切目薬の製造元、佐賀県の佐賀製薬(株)の管理薬剤師さんから頂きました。

目薬は大抵が開封されてから一週間、十日、あるいは一月以上にわたり使用されますよねえ。
もちろん身体に使うものですから、害がないものでなければなりません。
目薬も「なまもの」ですから、十日も二十日も経つ間にはだんだん変化してしまいます。この変化を最小限に食い止めて、最初の状態を保つように入れられるのが、添加物です。
ですから、市販の目薬にもほとんどの目薬に添加物が入っているのです。

「私は添加物が嫌い。どうしても、添加物のない目薬が欲しい。」というお客様には、あるんです。添加物の無い目薬が・・・。
それは、一回使いっきりタイプの目薬です。ただ、多分そういった目薬は割り高ですし、プラスチックの容器をたくさん使うこと考えたら地球にやさしいとは思えないって訳ですけど・・・。

添加物には次のような種類があります。安定化剤、防腐剤、保存剤、緩衝剤、等張化剤、PH調節剤、無痛化剤・・・。そして、ひとつの薬品がこの6つの作用の複数を併せ持っているのです。

雲切目薬には主に緩衝剤として、ホウ酸、クロロブタノール、主に防腐剤として、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピルが使われています。緩衝剤というのは、目薬の性質が酸性やアルカリ性になるのを防ぐ働き、防腐剤というのはそのものズバリ、腐るのを防ぐ働きがあります。

雲切目薬に入れられている添加物の量ですが、これは企業秘密の部分もありこの場で公開する訳にはいきません。ただ、基準で決められている最大使用量のあるものは半分以下、中には4分の1以下というものもあり、基準内で低く収められていると申し上げておきます。添加物を使いすぎると副作用の心配が出るし、不足すると効果が発揮されないということで、使用量の決定はかなり苦労されているというお話でした。

ひょとして、この中にホウ酸が入っているのを不思議に感じられた方いらっしゃいますか?
ホウ酸は昭和60年位までは、薬としてやけど、床ずれ、切り傷、湿疹などに、また肉や油の防腐剤として盛んに使われていましたが、その毒性が指摘されて、現在は眼科用のみに特別に認められている薬です。

毒性が低いと信じられていた頃、飽和ホウ酸溶液で広範囲にわたる火傷の治療をして中毒死したり、「てんか紛」として使用されて乳児が死亡したりの事故が起きていたそうです。健康な皮膚からはほとんど吸収されないホウ酸が、傷口からは容易に吸収されてしまうのが原因でした。

そういえば、つい少し前まで「硫酸亜鉛点眼液」というのが使われて、ホウ酸が2%目薬の成分として入っていました。この硫酸亜鉛が、実は元祖雲切目薬にも含まれていたのですよ!460年前の先人がもう、現在につながる薬を使っていたなんて、本当に凄いことだと思いませんか?

ごめんなさい、ホウ酸から話が脱線いたしました。ですから、もしホウ酸で洗眼される場合は2パーセント以下ということで、注意書き通りに薄めて使用して下さい。

どんなに良い薬も、使い過ぎれば毒になる!
使用量を守ってさえいれば、怖い薬の代表のように言われる「サリドマイド」だって、本当はとっても良い薬だったのです。

消えていった薬のなかには、とても良い薬がたくさんあります。もちろん元祖雲切目薬もそうですが・・・・。

いつかそんなお話もしようと思っています。

    

参考:「2000年改正 医薬品添加物辞典」 「日本薬局方解説書」

 

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