Roland D-50 Linear synthesizer |
Synthesis Method |
LA(=Linear Arithmetic) Synthesis |
Voices |
16 Voices (whole/split mode) or 8 Voice (dual mode) |
Multi mode |
2(split mode) |
Sounds |
64'patch |
Keyboard |
61 Synth-action keys with Initialtouch and aftertouch sensitive |
Controllers |
Volume, Aftertouch,Pitch bend leber(Pitchbend/Modulation),Joystick (for Data entry ), Sustain pedal,Swith pedal,Volume pedal,1 assignable Pedal,Key transepose/Chase/portamento botton |
Outputs |
2Outouts(L/R), Phones. |
Interfaces |
MIDI In/Out/Thru |
Expansion |
One slot (for Program/RAM card). |
Effects |
Digital effects(reverb/chorus/eq) |
Comments |
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Roland D-50はLA音源搭載のデジタルシンセです。 What's LA? LAとはリニア・アリスメティックの略で、この方式を採用しているシンセは、リニア・シンセサイザーと呼ばれます。リニアとは、数学の世界で「線形系」(四則演算が成り立つ系)を意味します。リニアシンセは、この線形演算を使った波形合成方式を用います。とはいっても、アナログシンセも加算・減算で音の合成を行っている線形合成方式です。D-50に代表されるDシリーズのLA方式とは、アナログシンセの音作りのプロセスを、デジタル化したものです。フルデジタルでありながら、同じくフルデジタルであったヤマハのFM音源のように、音作りが複雑でなく、ある程度出音が予想しやすくアナログ感覚の音作りができるという点で、理解しやすい方式といえます。でも本体でのエディットは、慣れるまではかなり複雑な操作系としか感じられませんでした。 DシリーズのLA方式には、もう一つ特徴があります。それは、デジタル方式による波形合成の他に、PCMサウンドジェネレーターを搭載した、複合構造をしていることです。 自然界の音は、複雑な波形成分を含んでおり、それは合成では表現しきれません。また、時間とともに、波形成分が刻々と変化していくために、波形合成を数値計算で処理するのも限界があります。 この、合成しきれない複雑な波形成分こそが、個々の楽器の、音の特徴となる部分であり、しかも、アタック時に多く含まれる倍音です。そこで、 「合成しきれない複雑な波形成分」をPCMデータ化して、合成音に加えることでリアルさを高めたのがLA方式です。 アタック部分に加えればいいのですから、PCMデータは、あくまでもデジタルシンセシスを補強する為だけに存在すればいいわけです。そこで、Dシリーズでは、PCMデータは要素だけを抽出した「音素片」としてメモリーされ、シンセ合成はできません。D-50には、 100種類に及ぶPCM波形がメモリーされています。その内訳は、楽器のワンショットサンプリングによる音素片と、そのループ波形、様々な音素片をループさせた波形が用意されています。容量はわずか500キロバイト!!!でも、当時としては大容量だったのです。
DA/ADは20ビット、内部処理に至っては28ビットという驚異のハイファイシンセというのもウリでした。 プリセット音の音作りは、基本的には、音の立ち上がりをワンショットPCMで、残りの部分をシンセ音で作るというスタイルです。初めてD-50の音を聞いたときは、DW-8000では到底出ないリアルな音に、度肝を抜かれたものです。(DWでは作れなかったオケヒットを、D-50で作れたときは感激したもんです) その後、KORG M1等に代表される、「マルチサンプリングされたPCMデータ」を大量に内蔵する機種の登場で、D-50の「リアルサウンド」という面での優位性はあっけなく無くなってしまいます。最近の楽器で耳の肥えたみなさんには、とてもリアルには聞こえないかもしれません。しかし、ざらざらしたPCMデータを用いたベル系やパッド系、ブラス系のサウンドなど、捨てがたい魅力があるのもまた事実。このリアルすぎないうそっぽい感じが今となってはいいんです。シンセ部分もリング・モジュレーターやパルス・ワイズ・モジュレーションを用いれば、面白い音作りがまだまだ可能。いまだに「D-50の音」として立派に個性を保ち続けています。
D-50の音を聴くことができるアルバムといえば、it Bitesの3rd「EAT ME IN ST.LOUIS」がおすすめです。キーボーディストのジョン・ベックはD-50のサウンドがよほど気に入ったのか、収録曲のほとんどで、D-50の音が(プリセット音そのままで)聴かれます。他にも、DX7のエレピや、SUPER JX(JX-10)のブラス、ストリングスも多用されています。セカンドアルバム発表直後のツアーでは、Jupiter-8やJUNO-106も使われていました。 「EAT ME IN ST.LOUIS」 it Bites
残念ながら、このアルバムが、it
Bites最後のスタジオアルバムとなってしまいました。プログレ、ポップ、ハードロック、様々な要素を曲の中に持ち込む技巧派集団だったのですが、かえってそれが、ファンをもってしても、彼等をどのジャンルへカテゴライズするか悩ませてしまい、結果としてバンドの寿命も縮めることに繋がったのではないでしょうか。非常に好きなバンドだっただけに呆気ない空中分解が惜しまれます。 |