= その38 =

 
〜長野県警の山岳遭難事故統計(平成18年)から〜


中高年登山者で賑わう山小屋の様子


 最近長野県警がまとめた県内の山岳遭難事故統計によると、遭難事故は、過去2番目に多発しました。中でも遭難者数は過去最悪となっています。
 また、40歳以上の中高年登山者の事故が8割を占めるなど、依然として効率で発生しています。
 今年も2月4日現在、6件の事故が発生し、3人が死亡しています。死者の3人は50歳代1人、60歳代1人、70歳代が1人といずれも中、高齢者です。 
  遭難者数は過去最高
    遭難者数の222人は、県警が遭難事故の統計を開始した昭和29年以来最高(最悪)となりました。
発生件数についても平成15年の179件に次ぐ、過去2番目に多発する結果となりました。遭難事故は未だに多発傾向にあるようです。
 まずは、この多発の実態をよく知っていただきたいですね。
発生件数 死者 不明者 負傷者 無事救出 遭難者計
平成18年 173 54 102 62 222
平成17年 166 28 101 58 192
平成16年 139 33 88 87 58
平成15年 179   38 101 59 203
平成14年    155  31 97 48 183
 山系別では、北アルプスで多発 108件(全体の62.4%)発生
 死者は54人中33人(60%)が北アルプスで死亡し、行方不明者4人中2人が北アです。
山系別 発生件数 死者 行方不明 負傷者 無事救出 遭難者計
槍穂高(北ア南部) 40  5 23 15 43
後立山(北ア北部) 44 22 34 14 72
アルプスその他 24   6    12 10 28
   北ア計  108 33   2 69   39   143
八ヶ岳  22   8   15  7 30
戸隠連峰  2    1  3  4
南アルプス  7  2  1   3   7 
中央アルプス  9  2  6  1  9
   御嶽山    3  1    2     3 
その他 22  8  8 26
合    計 173 54 102 62 222
 原因別では、転倒や滑落が多発
 一般縦走路で足を滑らせたり、バランスを崩しての事故が多発しています。
 危険箇所では誰もが注意して事故は少ないのですが、大したことのない場所で多発しています。
原因別区分 発生件数 死者 行方不明 負傷者 無事救出 遭難者計
転落、滑落 86 14 72   86 
 病 気 27  8   19  27
 道迷い 16     25  25
 落 石  6  3  5     8
 雪 崩  7  8  11  2  21
疲労、凍死 21  19  10  16  45
 不明、その他 10  2  4    10
 計 173 54 102  62  222
 中高年の皆さんは、
 高山病、肺水腫、急性心不全、心筋梗塞等の病気遭難に注意しましょう。
 特に60歳以上の人は十分な注意が必要
 登山者の多くが中高年ですので、比率が多くて当たり前かも知れませんが、遭難者222人中177人(79.7%)が40歳以上です。50歳以上だと66.7%、60歳以上でも37.4%と高率です。
 死者26人が60歳以上というのも特徴の一つでしょう。
 遭難者の男女の比率は、男68.0%、女32.0%と概ね7:3の割合です。男性は注意。
年齢 死者 不明 負傷者 無事救出 遭難者計 遭難者の比率
30歳以下  4   1 21  19     45 20.3%
40歳代  6 18   5     29 13.0%
50歳代  18   2 26  19     65 29.3%
60歳以上  26   1 37  19     83 37.4%
合計  54   4 102  62    222 100%
 ケータイを携帯して(携帯電話が威力を発揮)
 遭難の届出は、携帯電話でされています。
 携帯電話の通話エリアが拡大しています。是非ケータイを携帯していきましょう。
 遭難救助にはお金がかかりますよ
   生命を救うため、救助活動は一刻を争います。従って救助に従事する隊員は、現場における最善の努力をしています。
 たとえば救助隊員でも、長野県のように広い山域では、警察の救助隊のみで、その全ての事案に対応できませんし、また、体制も十分とは言えません。


「東邦航空のラマ」厳しい条件下で活躍する

 その際、民間の救助隊が出動します。一般の人が救助活動に出動してくれる訳ですので、当然日当や必要経費を支払わなければなりません。
 また、ヘリも必ず官庁のものが使えるとは限りませんので、民間ヘリを使用することになりますが、その場合、1時間単位で50万円から100万円かかります。なお、過去の例からしても行方不明者の捜索などには、莫大な費用が掛かります。 
 こうしたことを踏まえ、事故防止に十分配意する必要がありますし、万一を考えて計画書の提出、保険加入などの備えをしておく必要があります。例えば、
登山計画書を提出する。家族等に計画を知らせておく。(捜索範囲が限定できる)
山岳保険に入っておく。(普通傷害保険で安く加入でき、捜索費用が出る)
などです。
 備えあれば憂いなし。いつか自分も遭難するかもという「かもしれない」予測行動は、交通事故防止とよく似ていますね。
安全登山をお祈りします。

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中嶋 豊