公益社団法人長野県私学教育協会と知事との意見交換会概要
あいさつ
(宮川私学教育協会理事長)
- 私学教育向上の観点から、私立学校が地方創生に果たす役割や課題等について知事と意見交換をさせていただき、今後の私学振興に繋げていきたい。
(知事)
- 長野県の現在の一番の課題は人口問題。子どもの数を増やす、教育の質を向上させる、学校の定員を充足させる、県外から学生・生徒を呼び込むなど、地方創生にかかわって県と私学の皆様とは同じ方向を向いている。私学の皆様と一緒に取り組みながら、地方創生を推進していきたい。
子育て環境の改善、幼児教育の充実
(和田幼稚園協会副理事長)
- 長野県の豊富な自然環境、地域資源を活かした直接体験を大切にした幼児教育を確立し、信州型自然保育の更なる拡充と推進を図りたい。
- そのために、教育カリキュラムや保育者養成のカリキュラム等を調査・研究する研究組織を立ち上げ、官民一体となって幼児教育推進を図っていきたい。
- 信州型自然保育の充実により、県内外に広くPRできる「幼児教育先進県長野」を確立し、北陸地域から県内養成校に学生を確保し、県内学生の県外流出を抑えて、幼稚園教諭の人材不足の解消と、これらの人材の県内定着を図っていきたい。
(西方幼稚園協会理事)
- 母親の子育てに対する不安が2人目以降の出産を阻害させている。預かり保育、子育て相談など子育て支援センターとしての機能充実を図り、出産しやすい環境を作っていきたい。
(大森幼稚園協会副理事長)
- 幼児教育の質の高さは、よい先生に出会うこと。幼から小中高の連携により学校カリキュラムとして幼児教育体験を継続的に行い、児童・生徒が幼児との関わりを実感することが、結婚・子育てや、よい先生を育てることに繋がっていく。
(知事)
- 信州型自然保育は、特化型を念頭に置いていたが、それでは既存の幼稚園・保育所の努力が評価の対象にならないということで、普及型も取り入れた。県内全体の幼稚園・保育所などが、自然に目を向けて子ども達を育てているということをPRしていくことが重要。皆さんの視点を取り入れて、制度を改善していきたい。
- 新県立大のこども学科において、自然保育や発達支援に力を入れてカリキュラムを作っていきたいと考えている。既存の大学との関連性も含めて、研究組織については、作る方向で前向きに考えていきたい。
- 人材確保は極めて重要な課題。県内大学では地域貢献活動を活発に行っていただいている。また、信州型自然保育も、認定が進めば特色ある教育になっていく。長野県の強みを活かした施策を具現化してきているが、それをアピールできていない。9月県議会に「“大都市圏から信州の学び舎へ”進学者拡大事業」の補正予算案を提出しており、首都圏にアピールしていく。幼児に教える立場の人材を引き付ける工夫も必要だとわかった。県として何をすべきか、私学の立場から意見をいただきたい。
- 子育て支援は、一義的には市町村の役割。県が何を後押しすれば効果的か。
(和田幼稚園協会副理事長)
- 保育園や幼稚園に入っていない「保育に欠けない子」に対して、国の財政支援が全く無い。このような子に対する支援が、子育ての面から地方創生に繋がると考える。
(窪田幼稚園協会理事長)
- 子どもを産み育てることに対する若者のマイナスイメージを払しょくするために、質の高い教員を加配することが必要。また、小・中・高校での継続的な幼稚園児との交流体験学習を通じて、児童・生徒が子どもに関心を持つことが、将来の出産・子育てに繋がると考えており、このような取組に県や市町村から支援していただきたい。
人材の育成・定着戦略
(成田専修学校各種学校連合会理事長)
- 県内で学び、県内で働く人々を育てることが地方創生の原動力。職業教育の大きな担い手である専門学校振興のため、奨学金制度、私学助成、県内外高等教育機関との交流が必要。
また、社会人入学生をいかに増やすかが課題。
(住吉短期大学協会理事長)
- 県内高等教育機関の魅力アップにより、県内大学・短大に高校生を留まらせたい。
例えば、東京の大学と県内大学・短大との間の半年程度の学生間交流制度などにより、大都市志向の県内高校生を県内大学・短大に引き留めることができるのではないか。このような学生間交流促進のため、交流拠点としての空き施設などを活用した共同利用の宿泊兼交流施設を整備できないか。
また、私学高等教育機関における長期・短期の留学生の受け入れ促進のため、空き家の活用や上記の宿泊兼交流施設整備に県として支援してほしい。
(西澤中学高等学校会長)
- 高校卒業生が県内大学等に留まるためには、多様な高等教育の学びの場が用意されていることが重要。高校では、将来の職業をイメージしたキャリアガイダンスを行っており、自分のなりたい職業に必要な学校が県内にもあるとわかれば県内に留まる生徒も増える。また、企業の採用対象は大卒がほとんどであるが、高校生に対する企業のPRにより、一旦県外に出て行っても、大学卒業後、県内に戻ってくる可能性が高まる。
(知事)
- 総合戦略の中に、信州型マイスター制度を入れることはできないかと考えている。これからは多様性の時代。酪農や木曽の漆器職人、林業などは必要な職であるが、就業するまでにはハードルが高い。子どもの頃から、多少なりとも関わりがあれば、将来の就業に影響する可能性がある。職業教育・職業人材のあり方を一緒に考えてほしい。
- 総合戦略(案)において人生二毛作社会づくりを掲げている。75歳まで現役世代と考えている。社会人の入学については、定年後に第二の職業を選択するための学びやすい環境として活用できないか。シニア大学で職業教育の「導入部分」を学習し、専門性を深めたい人は、引き続き専修・各種学校で学ぶなど、シニア大学と専修・各種学校の連携を図ることはできないか。
- 宿泊兼交流施設については、旅館・ホテルや、大学・企業等の保養施設を活用できないか。学校間の交流は、観光のハイシーズン以外の時期の方がいい。学割で格安に宿泊してもらうなど、工夫の余地がある。
- 海外に学生が留学・インターンシップする際の奨学金制度について、経済界の皆様と検討しているところであり、留学生の受け入れのための方策も含めて検討していきたい。
- 私学教育協会の皆様と一緒に地方創生を進めていきたいので、協力をお願いしたい。
全体
(宮川私学教育協会理事長)
- 地方創生に係る私立学校の取組充実のためにも、以下の私学の課題に対する支援をお願いしたい。
私立幼稚園教育振興費補助金の充実
生徒急減期における私立高等学校生徒数の確保
私立中高一貫校の中学校の授業料無償化
私立短期大学及び専修学校の学生に対する奨学金制度の新設 - 第2回私学振興大会への出席をお願いしたい。