6V6 P.P SuperRadio |
1987年の夏だったと思います。ちょっと精神的にブルーだった私は突然ラジオが作りたくなりました。かといって今更パーツもなければキットもありません。そんな時、耳寄りな情報が飛び込んで来ました。長野駅西口のリサイクル屋(骨董屋と同義)に真空管ラジオが一杯転がっていたというのです。早速飛んでいったのは言うまでもありません。間口の狭い店の裸電球の光の中に、5〜6台の真空管ラジオが並んでいました。その中でひときわ私の眼を惹いたのは、大工が手仕事で作ったかと思われるサクラ材のケースと、それとは別に4〜5倍はあろうかというSPBoxがセットになったラジオでした。見るとマジックアイも付いており、ウラ蓋を開けると見えるのはGT管です!「これは買いだ!」大枚1万5千円を払い、嬉々として自宅へ持ち帰ったのでした。 |
家で落ち着いて中を見てみると、やはりメーカー製ではなくアマチュアの作品のようでした。SPを接続し(Nationalの20cmメカニカル2Wayでした。)おそるおそる灯を入れて見ると、蚊の泣くような音ではありますが動作します。出力管は6F6 P.P!の割には出力が小さすぎます。ケースから出し、シャーシをひっくり返してみると「なんと!ものすごい蜘蛛の巣配線!」(^_^;)小、 中学生が作ってもこうはならんだろうと思うような配線です。(^_^;)(^_^;) 「えーい、面倒くさい。作り替えだ」どうせ製作意欲を満足させるために買ってきたのです。この段階でレストアでは無く、完全作り換えを決意しました。
回路はPU端子付き、帯域可変型IFT搭載、6F6 P.Pの1バンドスーパーヘテロダイン式です。でかいSPBoxと考え会わせても、かなりの音響重視設計だと言えるでしょう。でも、この蚊の泣く様な音ではどうしようもありません。シャーシからIFTとコイル、バリコンを除く全てのパーツを撤去しました。基本的考え方として 1.長期の使用に耐えるパーツを選ぶ、2.原機の回路性能か、それ以上を維持する を目標に製作することにしました。原機から引き続き使用するパーツはシャーシ、IFTとコイル、それにバリコンとアウトプットトランスのみとし、あとは全て新規に調達することとします。アウトプットトランスはNationalのかなり大きい物が付いていたので流用、それに対して電源トランスはB電圧が350V以上で100mAと、帯に短し襷に長し状態で却下となりました。
構成としては6V6 P.Pの1バンドスーパーヘテロダイン方式とし、マジックアイを付け帯域可変型IFTも使用することにしました。ただしPU端子はクリスタルカートリッジプレイヤーも無いことから省略し、代わりにトンコン回路をつけることとしました。部品は、真空管ソケットはモールド型とタイト型(整流管、出力管)、オイルコンはなるべく使用を避け、真空管は同調指示管6E5(のらねこ商会Web)を除きGT管かメタル管で構成することにしました。(無線と実験の広告等で可能な限りメタル管を探しました。)SWL時代OMにお借りしたBC-348以来GT,メタル管の大ファンなのです。(^_^;)パワートランスは会社の先輩の処に270V、120mAの物があるのを発見、戴くことができました。ただしヒーター電流がちょっと少なく、マジックアイも有ることからパイロットランプを省略することで対応しました。夏の暑い日、エアコンも無い部屋でねじりはちまきで(汗が目に入るため)の半田付けでしたが、半田の臭いを嗅ぎながら気分爽快になっていく自分に我ながら驚きました(^_^)v
最終的な構成は以下の様になりました。
6SA7(Metal)ー 6SD7ー 6SQ7(Metal)ー6SN7ー6V6P.P
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5AR4 6E5
まぁ、なんの変哲もないスーパーラジオなんですが、検波は1N60のダイオードで行い、オーディオ段は6SQ7以降完全に独立した構成にしました。FM放送のチューナーでも接続すれば相当な音質であるはずです。また、中間周波増幅管は初め、お決まりの6SK7でやってみたのですが、何となく感度不足を感じ換えてみました。流石に6E5は新品がなく、中学生時代に分解した自宅のスーパーラジオの物を流用しました。20年以上前の球のヒーターが灯り、チューニングによってノードが変化したときには心の中で万歳を叫びました。気分はすっかりラジオ少年です。(^_^)v ですが調整を終わり、最終的に計算してみるとパーツ代に20,000円くらい掛かってしまい、総工費は35,000円近くとなっていました。(^_^;)(^_^;)
あれから14〜5年経とうとしていますが、最初の目論見通り、件のラジオは現役で動いています。多分ラジオ少年だった自分へのメモリアルとして、これからもたまに灯を入れては、ひとり悦に入ることだろうと思います。
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