SP-600JX





この受信機を入手したのは、ひょんなきっかけからでした。某真空管MLで、話のついでに(^_^;)「SP-600という軍用受信機は現在入手可能でしょうか?」との記事をお送りしてみたのです。するとそのMLの主催者の方から「昔、お客様にお世話したことがあるし、今もこころ当たりがあるから訊いてみてあげよう」とのメールを頂いたのです。正にヒョウタンから駒ですね。別項で書いたように昔からの憧れの受信機ではあったのですが、その時点で特段資金供給の当てが有ったわけではなく、正直ちょっと焦ったのも確かです。このMLはオーディオ系だとばかり思っていたら、両刀遣いの方が結構居られたのです。まぁ、かく言う自分もそのひとりではありますが・・・。(^_^;)

 
暫くすると「現在の所有者(東証一部上場企業の役員をされている方とか)が、"受信機を次代に引き継ぐために、大切にして呉れる人なら譲っても良い" と言っている」とのメールが届きました。これを読んで覚悟を決めました。「ここまで大切にしている物をお譲り頂くのだから、女房を質に入れてもお願いしよう」(^_^;)(^_^;) 幸い質屋にお願いしなくとも、何とかヘソクリの範囲で手当することが出来ました。こうして憧れの受信機 SP-600JX は引っ越し荷物宅急便の扱いで厳重に梱包され、我が家に届いたのです。(宅急便の料金も旧所有者が出して下さいました。)時に平成10年8月19日でありました。

 さて、早速点検です。外観上は受信機ケース上面角に若干の塗装剥がれが有る程度。あと残念なのは、ケースの前面右側の足が欠落していることくらいで、他に目立った瑕疵はありません。大切に扱われていたのが推測されます。

その他としては

コイルボックス(?)上のプレート SP-600JX6 SirealNo 80488

前面パネル左上のプレート R274B/FREE Nobsr 52039

前面パネルやや中央下のプレート Long Beach Naval Ship Yard 12 - 65

などの表示が有ります。

どうやら米国海軍造船廠で使われていた物でしょうか。1965年12月納入?

目視では

パワートランスは角ばったタイプ、前面パネルはアルミ製、メーター目盛盤は金属製、X'tal切り替えつまみは黒色

などが判ります。SP-600としては比較的後期のタイプかと思われます。

 それでは早速音だしを・・・・。「ん?アンテナコネクタが無い!」よくよく見ると内部のシャーシ上面にN型接栓が。「さすが軍用機、アマチュア機などとは違うなぁ」と妙に納得です。ジャンク箱の変換コネクタ等を組み合わせて、何とかアンテナらしき物を接続しました。問題は未だあります。SP-600はスピーカインピーダンスが600Ωなんですね。昔は真空管OTL用などとしてインピーダンスが600Ωのスピーカも散見されたのですが、今は秋葉原などにも無いようです。で、ここは先駆者、木村OMに御相談し、田村製作所に600Ω対8Ωのオーディオトランスを特注しておいたのです。(ただし田村ではステレオに使うと思ったのか、到着した荷物からは2個のトランスが現れました。注文は確か1個だったはずなんですが・・・。使い方が特殊だから仕方ないですね。(^_^;) どなたかご入り用ならお譲りします。)そうこうして、付けたスピーカはBOZEの2Way10cmでした。でも、できればトランスを経由しない、オリジナル600Ωスピーカ直結の音を聴いてみたいものです。

 特性その他は、現在ろくな測定器も無いし(デジタルテスタと真空管式簡易テスオシくらい)、諸先輩が多々発表されておられますので、もっぱら個人的な感覚的感想に終始します。まずダイヤルエスカッションのカーブの具合が、見てくれ何ともGood!(^_^;) チューニングつまみとの兼ね合いで、SP-600に女性的な感じを受けるのは私だけでしょうか?(同一スペックで造られたというSX-73なんぞと比べれば一目瞭然だと思うのですが)(^_^;)(^_^;)チューニングダイアルの滑りはBCL用としては、ちょっと精緻過ぎる感じがしないでもありません。でも短波帯、それも軍用ともなれば、このくらいが適度なのだろうと思います。AM放送を12Khz帯域で聴くと、AMが思った以上にHiFiなのに気が付きます。SP-600で聴く古典落語やクラシックの音楽の泉なんかはお勧めです。

 実は私は、SP-600と先日入手したCollins 51S-1は、無線室に置いておりません。シャック兼喫煙室にこういったVintageな機器を置くのは、いかな煙草吸いの私でも躊躇します。で、幸いなことに別室のオーディオルームは一応禁煙になっておりますので、現在は室内アンテナを付けてオーディオ機器と同室に設置してあります。「無線用のアンテナを使用しなければ本来の性能が発揮されない」と言われる方が居られると思いますし、その通りだと思います。ですが私にとって、これらの受信機は通信機ではなくて「癒しの機器」という範疇に入っているのです。その姿態を眺め、音を聴き、ダイアルノブの感触を確かめつつ、先人の叡智に感じ入るといったものです。その意味でオーディオ機器と同列に置くのは私にとって、ちっとも不自然な事ではありません。ですが世間では、こういった類の状態を、「病膏肓にいる」と言うのだ、というのも充分に承知しております。(^_^;)(^_^;)


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