映画「００７」のジェームス・ボンド役の ピアース・ブロスナン から、

「もし君の人生を映画にするなら、主役をつとめるのは スタントマン以外に考えられないね　――【訳：戸田　奈津子】」

　と半笑いで言われるくらい、危険な四半世紀を生きてきた私が考えるに、授業中にチンコが痒くなった時ほど危険な場面はない。 中学または高校生で、となりに好きな女子に座られたとあったら、事態はさらに深刻である。私はたびたび、そういった危機的状況に 出くわしたりもしたが、これは健康な男子ならば一度は通る道であり、とりわけ私がインキンタムシというわけではない。

　この授業中にチンコが痒くなるという非常事態の対処法としては、先生のお話を真剣に聞いている面持ちで、さりげなく片手（隣接する女子と反対側の手）をズボンのポケットに 突っ込んで、腕を動かさないように指先だけで掻くというのが定石である。私もよくこの手をつかったものだ。

　しかし、中にはとても悪質な痒みがあるもので、先の方法で痒みがおさまったと安心していると、またじわりじわりと痒くなりだすものがある。 こういうのは非常に困る。

　だったらもう一度ポケットに手を突っ込んで――という手はもう使えない。ただでさえ授業中にズボンのポケットに手を入れるなんて不自然極まりない行為なのに、 そんなのを何回も繰り返したら「僕チンコ掻いてまーす！」と諸手を挙げて発言しているようなものである。

　ここは次善の策として、ズボンを上げなおす振りしてチンコの痒みを紛らわせるという手を使いたい。この策の優れている点は、 ズボンを上げなおしてチンコの痒みを紛らわせた後に、ズボンのしわをなおしながら、どさくさに紛れてチンコをひと掻きできるというところにある。このひと掻きは、 少し強めくらいがちょうどいい（豆知識）。

　それでも、まだまだ痒いというのならば、これはもう小用に行く振りをして、トイレで掻き毟るしかない。ここでは誰の目も気にすることなく、ギターリストのように 掻きまくってやりましょう。I Love New York！！

　最悪それでもまだ痒い、ということがあるかもしれない。

　そこまでいったら恐らくインキンタムシの疑いがあるので、病院に行き、看護婦さん相手にもうひとカキするように。