シルビア通信1 >> 小ネタ >> 星降る夜に願いを込めて



 お空にはキラキラ お星さま
 くらい宇宙ににじむ 小もち月
 田んぼの蛙はグーグー 草の根から聞こえる鈴の音リーリー
 お外はとっても 賑やかです

 たっくんは自分のお部屋の窓からお空を見上げています
 月の光に照らされた 煙のような雲をひとりで見つめています

 ずーっと雲を見つめていると いつしかその雲は お母さんの顔のように見えてきました

 たっくんの目から 涙がこぼれ落ちました
 ポロポロ ポロポロ 流れ落ちました

 キラリ 夜空に流れ星

 たっくんは そのお星さまにお願いをしました

「お星さま お願いです。天国にいるお母さんに会わせてください」

 するとどうでしょう
 たっくんのお願いが通じたのか お星さまがピカピカッっと大きく光りました

 それはまるで お星さまがうなずいてくれたよう
 たっくんはお星さまに気持ちが通じたようで とてもうれしく思いました

 お星さまは どんどん どんどん 大きくなっていきます

 どんどん どんどん 大きくなって
 どんどん どんどん 眩しくなって

 たっくのお家に直撃しました

 よかったね たっくん。
 これで天国のお母さんに会えるよ。



 お空にはキラキラ お星さま
 くらい宇宙ににじむ 小もち月
 田んぼの蛙はグーグー 草の根から聞こえる鈴の音リーリー
 お外はとっても 賑やかです

 車いすに座って たっくんは自分のお部屋の窓からお空を見上げています
 月の光に照らされた 煙のような雲をひとりで見つめています

 ずーっと雲を見つめていると いつしかその雲は お母さんの顔のように見えてきました

 たっくんの目から 涙がこぼれ落ちました
 ポロポロ ポロポロ 流れ落ちました

 キラリ 夜空に流れ星

 たっくんは そのお星さまにお願いをしました

「お星さま お願いです。天国にいるお母さんに会わせてください」

 するとどうでしょう
 たっくんのお願いが通じたのか お星さまがピカピカッっと大きく光りました

 それはまるで お星さまがうなずいてくれたよう
 たっくんはお星さまに気持ちが通じたようで とてもうれしく思いました

 お星さまは どんどん どんどん 大きくなっていきます

 どんどん どんどん 大きくなって
 どんどん どんどん 眩しくなって
 どんどん どんどん たっくんは嫌な予感がしました

 しかし お星さまはたっくのお家に直撃することなく 屋根のあたりでピタリと止まりました
 そして たっくんに申し訳なさそうに 謝りだしたのです

「ごめんね たっくん。君のお願いは かなえてあげることはできないんだよ……」

「どうして?」

 たっくんはまんまるいお目々でお星さまを見つめて尋ねました

 お星さまは答えました

「君のお母さんは地獄にいるんだ」



 ある日のことです

 子犬のむっくんは眠る前に歯みがきをしようと 洗面所の鏡の前にたっていました

   夜、寝る前には必ず歯をみがくこと

 それがお母さんとむっくんの約束事です



 でもその夜のむっくんはなんだか歯をみがくことがとても面倒くさくなってしまいました
 毎日 毎日 歯をみがくなんてばからしい
 そのうち「1日くらいみがかなくたって大丈夫だよ」 と思うようになってしまったのです
「うがいだけでいいや」
 むっくんはお母さんとの約束をやぶり 歯ブラシをしまうと うがいだけをするためコップの中に水を注ぎ入れようと 水道の蛇口をひねりました

 とその時です 
 目の前の鏡に見たこともないお婆さんが映っているではありませんか
 むっくんは自分のうしろにお婆さんが立っているのかと思いましたが そうではありません
 お婆さんは鏡の中でニコニコと笑っているのです
 しかも こちらに手を振っています

 むっくんは 初めとっても驚きましたが
 不思議とちっとも怖くありません
 お婆さんはとても優しい目で むっくんを見つめています

「ごめんね、むっくん。さぞ驚いただろ?」

 お婆さんが話しかけてきました
 その声は春風に太陽のあたたかさをのせて流れてきたような とても優しい声でした

「うん、びっくりした。お婆さんは誰なの?」
「お婆さんはね、鏡の世界に住んでいる魔法使いなんだよ。むっくんは歯みがきが嫌いなんだね?」
「うん、だいっ嫌い。だってとても面倒くさいんだもん」
「そうかい、そうかい。だったらねむっくん。こっちの世界にくるといいよ」
「こっちて……鏡の世界?」

 お婆さんはにっこりと笑うと 首をこくりと縦にゆすりました

「鏡の世界はね、見ての通りそっちと姿形はまったく同じなのさ。でもね、いろんなことがあべこべにできているんだ」
「あべこべ?」
「そう。右のものは左に、大人は子供のいいつけを守り、遊びは勉強よりもまずやらなくちゃいけない」
「へー、面白い世界だね」
「そう、とても面白い世界さ。しかもね、むっくんの嫌いな歯みがきだってしなくていいんだ」
「えー、本当に!?」
「そうさ。鏡の世界じゃね、歯みがきをすると虫歯になっちゃうんだからね」
「ハハハハ」

 むっくんはとてもゆかいに笑いました

「どうだい、こっちに来たくなっただろ?」
「うん……でもお母さんに言ってからじゃないと……」
「おや、おや、さっき私が言ったことを忘れたのかい? 鏡の世界は姿形はそっちと同じなんだよ。むっくんのお母さんや  お家も こっちにはちゃんとあるんだよ」
「あ、そっか」
「さあ、さあ、こっちにおいで」

 むっくんはお婆さんの手にひかれるままに 鏡の中へと吸い込まれていきました



 鏡の世界。

 そこは真っ暗で……
 とても寒くて……
 つめたい風がごうごうと音を響かせ流れていて……
 その風にのせて子供たちの泣き声が聞こえてくる……

 それだけの場所でした

「ここが鏡の世界なの? ぼくのお家もないし、お母さんもいない。それにとても寒くて、真っ暗で……。さっきのお話と ぜんぜん違うよ。お婆さん? お婆さん!?」

 あたりを見渡しても いつの間にかお婆さんは消えていました

 すると とてもしわがれた恐ろしい声が 黒い空に響きわたったのです

「言ったろ? 鏡の世界はあべこべだって」


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