シルビア通信1 >> 小ネタ >> あいつに!アタック! >> 第1話 |
「ドキドキ! あいつに告白!」 わたしがあいつの目を見て話せなくなったのはいつからなんだろ?
校庭の隅でそんなことを考えながら、わたしはポプラの幹に寄りかかった。高校受験を控えたこんな時期に、こんなこと言うなんて、あいつにとってはすごく迷惑な話かもしれない。こんな大事なときに自分の気持ちに気づくなんて、ほんっとバカなことだと思う。でも…、でもこの気持ちをわかってもらいたい。 「……好きだってきもちを」 わたしはポプラの幹に、そっとため息を吹きかけた。 と、その時。幹の向こう側からあいつの……隆志がこっちに歩いてくる姿が見えた。 隆志はいつものように学生服の第2ボタンまでをはずして中の白いシャツをのぞかせながら、すこし猫背な感じで、こちらへと歩いてきた。あいつの足音が大きくなるにしたがって、わたしの鼓動も速くなった。 「よう、ハミ子。きたぞ」
緊張ですこし言葉がつまった。 「べつにいいけどさ。どうしたん? そのポプラの木を家まで一緒に運んでくれって言うなら、そりゃ無理だぞ」
いつものように冗談交じりで話してくる隆志に少し緊張がとけた。 「あのね、こんな時期にこんなこと言うのもなんだと思うんだけど。ずっと前から、隆志にね、言いたいことがあったの」
わたしは一呼吸して話を続けた。 「わたしね、ずっと前から……好きなひとがいてね。でね、今日、その好きなひとに告白をしよと思って……」 そこまで言って隆志の顔を見ると、わたしの言いたいことがわかったのか、うつむいて、右手でほっぺたを気まずそうに掻いていた。 今なら言える。 わたしは「よし!」と気合を入れると、自分の気持ちを伝えるために、制服を脱いで、下に着込んでいたテコンドー着の姿になった。 「隆志! わたしの気持ちうけとめて!!」 わたしは虚空高くかかとを上げると、そのかかとを地球の重力に引かれるがまま、隆志の頭に叩き落した。 ゴツッ。 鈍い音と共に、隆志がくずれ落ちた。 「わたしの隆志を想う気持ちを、カカト落としで表現してみました」
そう一言つぶやくと、隆志は目を閉じた。 わたしの気持ちはこれで十分つたわったはず。隆志が気を失ったので(たぶん死んでいない)返事を聞くことはできないけど、しょうがないよね。 隆志、いい返事まってるよ。 (つづく) |
【←もくじへ】 | 【第2話へ→】 |
目次 | HOME |