シルビア通信1 >> 小ネタ >> あいつに!アタック! >> 第1話

「ドキドキ! あいつに告白!」

 わたしがあいつの目を見て話せなくなったのはいつからなんだろ?
 授業中、ノートを取りながらあいつの顔を見ちゃうようになったのはいつからなんだろ?
 そうじの時間、先生の机をいっしょに運んでドキドキしたのって……。
 あいつを他の男子より特別に感じたのって……。

 校庭の隅でそんなことを考えながら、わたしはポプラの幹に寄りかかった。高校受験を控えたこんな時期に、こんなこと言うなんて、あいつにとってはすごく迷惑な話かもしれない。こんな大事なときに自分の気持ちに気づくなんて、ほんっとバカなことだと思う。でも…、でもこの気持ちをわかってもらいたい。

「……好きだってきもちを」

 わたしはポプラの幹に、そっとため息を吹きかけた。

 と、その時。幹の向こう側からあいつの……隆志がこっちに歩いてくる姿が見えた。

 隆志はいつものように学生服の第2ボタンまでをはずして中の白いシャツをのぞかせながら、すこし猫背な感じで、こちらへと歩いてきた。あいつの足音が大きくなるにしたがって、わたしの鼓動も速くなった。

「よう、ハミ子。きたぞ」
「うん。ゴメン……ね、急にこんなとこ呼び出しちゃって」

 緊張ですこし言葉がつまった。

「べつにいいけどさ。どうしたん? そのポプラの木を家まで一緒に運んでくれって言うなら、そりゃ無理だぞ」
「ち、違。そんなわけないでしょ、バカ!」

 いつものように冗談交じりで話してくる隆志に少し緊張がとけた。

「あのね、こんな時期にこんなこと言うのもなんだと思うんだけど。ずっと前から、隆志にね、言いたいことがあったの」
「……なんだよ」

 わたしは一呼吸して話を続けた。

「わたしね、ずっと前から……好きなひとがいてね。でね、今日、その好きなひとに告白をしよと思って……」

 そこまで言って隆志の顔を見ると、わたしの言いたいことがわかったのか、うつむいて、右手でほっぺたを気まずそうに掻いていた。

 今なら言える。

 わたしは「よし!」と気合を入れると、自分の気持ちを伝えるために、制服を脱いで、下に着込んでいたテコンドー着の姿になった。

「隆志! わたしの気持ちうけとめて!!」
「ええー!? なに、何!? なぜテコンドー着?
せい!!!

 わたしは虚空高くかかとを上げると、そのかかとを地球の重力に引かれるがまま、隆志の頭に叩き落した

 ゴツッ。

 鈍い音と共に、隆志がくずれ落ちた。

「わたしの隆志を想う気持ちを、カカト落としで表現してみました」
「な…なんじゃ……そりゃ」

 そう一言つぶやくと、隆志は目を閉じた。

 わたしの気持ちはこれで十分つたわったはず。隆志が気を失ったので(たぶん死んでいない)返事を聞くことはできないけど、しょうがないよね。

 隆志、いい返事まってるよ

(つづく)



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