第4話「極悪たれ!!」
*極悪仮面を見るときは、パソコンから離れて部屋を明るくして見てね!
<前置き>
ミドリの行方を追って、かつてサバカレーを製造していた工場へと入ったオヤッさんと田中。しかし、2人はそこで思いもよらない光景を目にすることになる。2人が見たものとは……!?
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「ミ……ミドリさん?」
なんと、怪人達の真中で2人に話しかけていたのはミドリその人であった。普段の格好からは想像もつかないような派手な衣装を身に纏ってはいるが、狸の被り物の口から見える顔は間違いなく彼女であった。
「フハハハ、ようやく気付いたか。そうだ、私だ、ミドリだ。」
「ミドリさん? 一体……何だってミドリさんがそんな格好をしているんですか!?」
眉間にシワを寄せながら濁声で話すミドリ。いつもとは違うその
様子に田中達は狼狽した。
「くそー、お前達、ミドリさんに何をした!?」
田中が激しく詰め寄る。
「フハハハ、私が催眠術か何かで操られていると思っているのか?
おめでたい男だ。いいだろう説明してやろう」
ミドリは不気味な笑顔を浮かべたまま語り始めた。
「そもそもグリーンたぬきとは私が世界征服のために作った秘密結社だ。グリーンたぬき
>>ミドリのたぬき>>私のたぬき!! そう、グリーンたぬきとは
私の軍団なのだ!!!」
何ということであろう。悪の軍団グリーンたぬきを統率する黒幕、それがまさか
ミドリだったとは。こんな展開、作者自身ビックリである。
「お前のように優れた怪人が我々の敵に回ったのは誤算だったが、まあいい。私の
計画を邪魔するものは部下だろうが、親だろうが、始末するのみ。今日こそは死んでもらうぞローソン田中! かかれい!!」
「フイー!!」
ミドリの号令を合図に怪人達が一斉に飛び掛ってきた。
「何てことだ……、ミドリ……親に隠れてこんなことを」
「くそ、とりあえず目の前の怪人を倒さなくては」
泣き崩れる老いぼれの横で、田中が変身を始めた。
「へ・ん・し・ん、極悪仮面! とぉうーーーー!!」
叫び声と共に田中が空中に舞うと、黄金色の光が辺りを包んだ。
全身を神々しく包んだ白いタイツ。
体から溢れでる正義の光。
胸に書かれた“田中”の2文字。
刹那、地上に着地したとき、彼は最強のヒーロー「極悪仮面」としてそこに居た。
「さあ、来い!!」
極悪仮面は同時に襲いかかって来た怪人達の攻撃を綿毛のようにふわりとかわすと、逆に次々となぎ倒しては、
止めにきちんと首を折って回った。人生、何事も詰めが肝心である。
「……くそ! やはり奴らでは歯が立たんか!」
総裁ミドリが吐き捨てた。
「目を覚ましてくれミドリさん!」
「フン、まだ分からんか! 私が相手だ!!」
ミドリがスコップ片手に極悪仮面に遅いかかって来た。
「やめてくれミドリさん!!」
「どうだ極悪仮面! お前には私を傷つけることが出来まい!! ハハハハハ!!!」
ミドリは狂ったようにスコップで田中を殴り続けた。
ペチッ、ペチッ、ペチッ、ペチッ、ペチッ。
田中にはもはやミドリと戦う気力などなかった。愛しい人ミドリ。どうして彼女を傷つけることが出来よう。
「戦え!! 田中!!!」
オヤッさんの叱咤が田中に飛んだ。
「無理です! ミドリさんと戦うなんて僕には出来ません!!」
「戦うんだ田中! 世界のために!!」
「……僕には……僕にはできない……」
崩れ落ちる田中。
「フハハハ、甘ちゃんヤローが!! 死ね!!」
ミドリは狂ったようにスコップで田中を殴り続けた。
ペチッ、ペチッ、ペチッ、ペチッ、ペチッ。
「田中、なぜ私がお前に“極悪仮面”と名付けたと思う!?」
「エッ……?」
オヤッさんが静かに語り始めた。
「……正義の味方には確かに優しい心が必要だ。そして、それはなくちゃならんものだ。
しかしな田中。悪と戦うには優しい心を捨てなくちゃならん時がある。奴等は手段など
選ばん。田中……お前は地球の平和を守らなきゃならん正義のヒーローだ。時には私情を捨て、
冷徹な判断を下さなきゃならんこともある!」
「オヤッさん……」
「頼む……娘を、ミドリを倒してくれ。世界を救ってくれ! 極悪になれっ!!」
「ウルサイ、老いぼれが!!」
ミドリがスコップをオヤッさんへと振り投げた。スコップはオヤッさんの眉間に見事突き刺さった。
「オヤッさーーーーーん!!」
「ハハハ! 次はお前がああなる番だ」
ミドリはポケットから八方手裏剣を取り出すと、田中の眉間に突き刺そうとした
……瞬間、
ドゴーン
大きな爆音と共にミドリは何メートルも後ろの壁まで吹き飛ばされた。
「……くそ、痛ぅー、何だ一体?」
立ち上がりながら先ほどまで自分の居た場所を見ようとするも、爆発による大量の煙で視界が利かない。
……? うっすらと人のシルエットが見える。極悪仮面だろうか?
「…………許さんぞ」
煙が晴れると、そこには極悪仮面……らしき人物が立っていた。
「極悪仮面……? いや、なんだ!? 姿形がさっきとまるで違うぞ!!?」
そこには先ほどとは明らかに姿の違う極悪仮面、ローソン田中の姿があった。
「な……何だ? 何なんだその変化は!? そんな改造はしていない筈だぞ! これは一体どうなっているんだ!?」
全身を妖しく包んだ黒いタイツ。
沸騰した蒸気となってほとばしるエネルギー。
胸に光る“極悪”の2文字。
田中は顔をゆっくりと上げ、燃えるような目でミドリを睨みつけた。
「オレこそは正義の味方! 極悪仮面だ!!」
――ついに目覚めた極悪魂!! 次回ついに決着か!?――