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第1話「パンチパーマは短めに!?」

*極悪仮面を見るときは、パソコンから離れて部屋を明るくして見てね!

 最近は生徒になめられっぱなしだ。授業中にいくら注意しても聞く耳を持っちゃ くれない。ガツンと言いたいけれど、キレられるのも嫌だ。はぁー、何かいい手はない かなあ……。

 ――床屋で髪を切られながら山田は頭を悩ませていた。中学教師になって早3年。 学校には慣れたものの、肝心の授業のほうはさっぱりだった。今はクラスを任されている わけではなく一教科を教えている教師に過ぎないが、これではこの先クラスを任された 場合が不安だ。

「悩んでるね、ダンナ」

 床屋の主人が鏡の自分を見ながら話しかけてきた。それ程表情が暗いのだろう。

「生徒がいうこと聞いてくれなくて、教師に向いてないのかなオレ……」

「みんな悩んでプロになっていくんだよ。あんま自分を追い詰めちゃダメだよ先生」

 「みんな悩む」……か。山田は同期の佐藤のことを思い浮かべていた。同期の佐藤。 彼は生徒にも人気があるし、勉強もうまく教えているようだ。教師になるべき人間とは 彼のような男をいうのだろう。やはり自分は教師なんかに……。

 日頃の疲れのせいだろう。山田はそのままうつらうつらと眠った。



「……ンナ、……出来たよ。……ダンナ!」

 主人の声で目が覚めた。

「んん……わっ!!」

 山田は鏡に映っている自分を見て驚嘆した。

「こ……これが……オレ?」

「どうだい先生。これなら生徒になめられないよ。なんたってヤーさん張りのアイロンパーマ だからね。どう見たって堅気には見えねぇや、ハハハハ」

「笑いごとじゃないよ! これじゃ学校いけないよ! なおしてよ」

「馬鹿言っちゃいけねぇ。これを元に戻すのは……無理だ

勝手なことして何言ってんだよオヤジ!!

 20分後。店の前には頭を丸めた山田の姿があった。夕日に照らされたその姿は、 何かを吹っ切ったかのようだった。

 がんばれ山田!明日があるさ!!



――次回いよいよ極悪仮面登場!!――



第2話「極悪仮面GO!」

*極悪仮面を見るときは、パソコンから離れて部屋を明るくして見てね!

<前置き>

 物語の主人公ローソン田中は改造人間である。彼は格闘技の師匠であり育ての親でもあるオヤッさんから 「極悪仮面」の名を貰い、自分の体にいたずらした悪の秘密結社「グリーンたぬき」 と戦っていた。なぜ「極悪仮面」なのか? ……はさて置いて、ローソン田中は今日もグリーンたぬきの魔の手から世界と身内を守るために 戦い続けるのであった。

 極悪仮面ローソン田中は、自分の師であるオヤッさんが経営する 喫茶店、『かなぐり捨てて』でまったりとしていた。

「オヤッさんの入れてくれるコーヒーはいつ飲んでも美味いよ。ふー」

「ははは、騙されたな田中。それはコーヒーじゃなくて醤油だ。 ハハハハ」

「えー、ひどいなオヤッさん。道理で塩辛いわけだよ。ハハハ」

 そんな幸せな日常の一コマをぶち破るように、近所に住む子供が息せき切って店に 飛び込んできた。

「た、た、大変だよ田中のおじちゃん! ミドリのおばちゃんが、ミドリのおばちゃんが グリーンたぬきの怪人にさらわれちまったんだ よぅ!」

「何だって?ミドリさんが!? 君、僕をその現場まで連れて行ってくれ!」

「うん!」

「オヤッさん、行って来ます!!」

「気をつけるんだぞ田中! ミドリを、娘を頼む!!」

 近所の子供と田中は極悪バイセコーにまたがり、オヤッさんの愛娘ミドリ 救出の為現場へと急行した。道中、田中は「僕のことはおじちゃんではなく、お兄ちゃんと呼びなさい!」と子供を叱った。こういうところはきちんと教え込まなければいけない。田中はまだ28歳だ。

 必死で極悪バイセコーを漕いだ甲斐もなく、現場には30分以上もかかってしまった。子供が 喫茶店まで伝えに来る時間を考えれば、事件発生から優に2時間は経っているだろう。 現場には怪人やミドリはもちろん、行方の手がかりすらなかった。

「くそー、バイクの免許取っときゃよかった

 田中は過去の自分を悔やんだ。

 しかし今は過去を振り返っている時ではない。ミドリ救出が先決である。

「よーし、こうなったらあの作戦しかない」

 田中の頭には、ミドリ救出の秘策があった。その秘策とは一体?


――ミドリは果たして無事なのか? 次回を待て!!――



第3話「ミドリを救え!」

*極悪仮面を見るときは、パソコンから離れて部屋を明るくして見てね!

<前置き>

 友達以上恋人未満のミドリが、グリーンたぬきにさらわれてしまった。ミドリ救出に 流行らない店を飛び出た田中だが、ミドリの行方は全くつかめない。途方にくれる田中に ひとつの秘策が浮かぶ。その秘策とは……?

「よーし、こうなったらあの作戦しかない」

 田中には取って置きの秘策があった。

「おい君、近くの公衆電話に行って110番してきなさい!」

 さすが田中、頭の切れる男である。皆さんも知り合いがさらわれたら迷わず 警察に電話しよう。これは一般常識です。

「オーイ、田中!!」

 振り向くと、客足の鈍い喫茶店で待っているはずのオヤッさんが、 ジープから身を乗り出しこちらへやってきた。

「今グリーンたぬきから店に電話があって、例の場所で待っていると連絡が あったんだ」

例の場所だって? ……なるほど。よし、行きましょうオヤッさん!」

「おう!!」

 2人はグリーンたぬきの待つ例の場所へと向かって車を走らせた。

「ところで田中、例の場所ってのは一体何処なんだ?」

「さあ……見当すらつきませんよ

 2人は例の場所へと向かい、ただ闇雲に車を走らせた。


 20分後、2人は田中の野性的な勘と物語を手っ取り早く終わらせたい作者の 目論見で何とか例の場所へと到着した。

「ここが例の場所なのか田中?」

 そこは海に程近い閑散とした土地。聞こえる音といえば、波が岸壁にぶつかり砕け散る音だけだ。佇む二人の目線の先には、その機能を停止した何かの生産工場が物音ひとつたてずにポツンと佇んでいた。門扉の脇に 『サバカレー』とあった。

「行きましょうオヤッさん。ミドリさんはきっとあの中にいる!」

「よし、行こう!」

 2人は勇敢に工場内へと飛び込む振りをしながら、互いに互いを先頭へ押し出 しながら前に進んだ。やはり人間、最後にかわいいのは己のみ!

 崩れかかったドアを蹴破り中へと入る2人。

「フハハハ! 待ちくたびれたぞ極悪仮面!!」

 だだっ広い工場の真中で腕組みをしながら2人を睨む怪人達。10人はいるであろう彼らのしんがりに控えた怪人が、2人に向かって叫んだ。

「おい、お前達! ミドリさんを返せ!!」

 田中は臆することなく怪人達を指差し、怒鳴った。

「グハハハ、馬鹿め。気が付かんのか!!」

「何?」

 ……なんということだろう。2人は言葉を失った。彼らの目の前に広がる 光景……それは信じ難いものであった。

「ば……馬鹿な!!」

 2人は一体何を見たのか!?


――2人が見た悪魔のような光景とは? 次回を待て!――



第4話「極悪たれ!!」

*極悪仮面を見るときは、パソコンから離れて部屋を明るくして見てね!

<前置き>

 ミドリの行方を追って、かつてサバカレーを製造していた工場へと入ったオヤッさんと田中。しかし、2人はそこで思いもよらない光景を目にすることになる。2人が見たものとは……!?

「ミ……ミドリさん?」

 なんと、怪人達の真中で2人に話しかけていたのはミドリその人であった。普段の格好からは想像もつかないような派手な衣装を身に纏ってはいるが、狸の被り物の口から見える顔は間違いなく彼女であった。

「フハハハ、ようやく気付いたか。そうだ、私だ、ミドリだ。」

「ミドリさん? 一体……何だってミドリさんがそんな格好をしているんですか!?」

 眉間にシワを寄せながら濁声で話すミドリ。いつもとは違うその 様子に田中達は狼狽した。

「くそー、お前達、ミドリさんに何をした!?」

 田中が激しく詰め寄る。

「フハハハ、私が催眠術か何かで操られていると思っているのか?  おめでたい男だ。いいだろう説明してやろう」

 ミドリは不気味な笑顔を浮かべたまま語り始めた。

「そもそもグリーンたぬきとは私が世界征服のために作った秘密結社だ。グリーンたぬき >>ミドリのたぬき>>私のたぬき!! そう、グリーンたぬきとは 私の軍団なのだ!!!」

 何ということであろう。悪の軍団グリーンたぬきを統率する黒幕、それがまさか ミドリだったとは。こんな展開、作者自身ビックリである。

「お前のように優れた怪人が我々の敵に回ったのは誤算だったが、まあいい。私の 計画を邪魔するものは部下だろうが、親だろうが、始末するのみ。今日こそは死んでもらうぞローソン田中! かかれい!!」

「フイー!!」

 ミドリの号令を合図に怪人達が一斉に飛び掛ってきた。

「何てことだ……、ミドリ……親に隠れてこんなことを」

「くそ、とりあえず目の前の怪人を倒さなくては」

 泣き崩れる老いぼれの横で、田中が変身を始めた。

「へ・ん・し・ん、極悪仮面! とぉうーーーー!!」

 叫び声と共に田中が空中に舞うと、黄金色の光が辺りを包んだ。

 全身を神々しく包んだ白いタイツ。

 体から溢れでる正義の光。

 胸に書かれた“田中”の2文字。

 刹那、地上に着地したとき、彼は最強のヒーロー「極悪仮面」としてそこに居た。

「さあ、来い!!」

 極悪仮面は同時に襲いかかって来た怪人達の攻撃を綿毛のようにふわりとかわすと、逆に次々となぎ倒しては、 止めにきちんと首を折って回った。人生、何事も詰めが肝心である。

「……くそ! やはり奴らでは歯が立たんか!」

 総裁ミドリが吐き捨てた。

「目を覚ましてくれミドリさん!」

「フン、まだ分からんか! 私が相手だ!!」

 ミドリがスコップ片手に極悪仮面に遅いかかって来た。

「やめてくれミドリさん!!」

「どうだ極悪仮面! お前には私を傷つけることが出来まい!! ハハハハハ!!!」

 ミドリは狂ったようにスコップで田中を殴り続けた。

 ペチッ、ペチッ、ペチッ、ペチッ、ペチッ

 田中にはもはやミドリと戦う気力などなかった。愛しい人ミドリ。どうして彼女を傷つけることが出来よう。

「戦え!! 田中!!!」

 オヤッさんの叱咤が田中に飛んだ。

「無理です! ミドリさんと戦うなんて僕には出来ません!!」

「戦うんだ田中! 世界のために!!」

「……僕には……僕にはできない……」

 崩れ落ちる田中。

「フハハハ、甘ちゃんヤローが!! 死ね!!」

 ミドリは狂ったようにスコップで田中を殴り続けた。

 ペチッ、ペチッ、ペチッ、ペチッ、ペチッ



「田中、なぜ私がお前に“極悪仮面”と名付けたと思う!?」

「エッ……?」

 オヤッさんが静かに語り始めた。

「……正義の味方には確かに優しい心が必要だ。そして、それはなくちゃならんものだ。 しかしな田中。悪と戦うには優しい心を捨てなくちゃならん時がある。奴等は手段など 選ばん。田中……お前は地球の平和を守らなきゃならん正義のヒーローだ。時には私情を捨て、 冷徹な判断を下さなきゃならんこともある!」

「オヤッさん……」

「頼む……娘を、ミドリを倒してくれ。世界を救ってくれ! 極悪になれっ!!

「ウルサイ、老いぼれが!!」

 ミドリがスコップをオヤッさんへと振り投げた。スコップはオヤッさんの眉間に見事突き刺さった。

「オヤッさーーーーーん!!」

「ハハハ! 次はお前がああなる番だ」

 ミドリはポケットから八方手裏剣を取り出すと、田中の眉間に突き刺そうとした ……瞬間、



ドゴーン



 大きな爆音と共にミドリは何メートルも後ろの壁まで吹き飛ばされた。



「……くそ、痛ぅー、何だ一体?」

 立ち上がりながら先ほどまで自分の居た場所を見ようとするも、爆発による大量の煙で視界が利かない。

 ……? うっすらと人のシルエットが見える。極悪仮面だろうか?

「…………許さんぞ」

 煙が晴れると、そこには極悪仮面……らしき人物が立っていた。

「極悪仮面……? いや、なんだ!? 姿形がさっきとまるで違うぞ!!?

 そこには先ほどとは明らかに姿の違う極悪仮面、ローソン田中の姿があった。

「な……何だ? 何なんだその変化は!? そんな改造はしていない筈だぞ! これは一体どうなっているんだ!?」

 全身を妖しく包んだ黒いタイツ。

 沸騰した蒸気となってほとばしるエネルギー。

 胸に光る“極悪”の2文字。

 田中は顔をゆっくりと上げ、燃えるような目でミドリを睨みつけた。

「オレこそは正義の味方! 極悪仮面だ!!


――ついに目覚めた極悪魂!! 次回ついに決着か!?――



第5話「山田よ永遠なれ!!」

*極悪仮面を見るときは、パソコンから離れて部屋を明るくして見てね!

 頭を丸める羽目になった中学教師、山田はアパートの自分の部屋で寝転びながらテレビを見つめていた。

「極悪になれ……か」

 山田はそう呟くと洗面所へと向かい立ち上がった。「いやぁぁぁっ!」という気合いと共に……。



「キーンコーン、カーンコーン」

 月曜日。登校途中の学生達の中、注目を一身に集めた中学教師が颯爽と通学路を歩いていた。山田だ。

「なんだよあれ?」

「おおー、怖ー……」

「バカ、目あわせんなよ」

 ざわめく通学路。山田はそんな生徒たちを尻目に、不気味なうすら笑いを浮かべながら不適に通り過ぎて行った。



 ――8時20分。山田は校長室の前に居た。

「授業が始まる前に、生まれ変わったオレを校長に見てもらわないとな」

 山田は校長室の戸をノックすると「失礼します!」と勢いよく部屋に突入した。

「はい、何です……わー!!

 校長は座っていたイスから転げ落ちると、必死に謝りだした。

「ごめんなさい、ごめんなさい。いただいたシャブの料金は必ずお支払い致しますので、 もう少し待って下さい! 授業料や給食費を適当に巻き上げて、必ずやそちらに差し上げますので……」

「いやだな校長、僕ですよ。山田です」

「へっ?」

 校長はポカンとしながら山田を見た。

「山田……先生? ……な、なんでそんなヤクザみたいな格好をしているんですか? スキンヘッドで眉毛まで剃り落として……」

「時代は極悪ですよ校長」

「へっ?」

 山田は不適な笑みを浮かべた。

「今まで生徒になめられっ放しの僕でしたが、もう大丈夫。これからの僕は、極悪教師として生徒達を教育の名の下に屈服させて見せます。期待していて下さい、校長!!」

 山田はそれだけ告げると、その場から立ち去ろうとした。

「……山田先生」

 校長が戸口から出て行こうとする山田を呼び止めた。

「君……もう学校に来なくていいから



 その日の全校集会で、山田先生は生徒達に別れを告げた。

 さようなら山田。君は星になったんだね☆



短い間でしたが応援ありがとう!

仮面マスク先生の次回作に失望してください!!



【エンディングテーマ】

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