私的図書館 小説編

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少年名探偵虹北恭助の冒険 全1巻…はやみねかおる…[講談社]

講談社ノベルス史上最年少!という歌い文句の名探偵が登場する本格ミステリです。ちなみに主人公は小学6年生。 作者は児童向けの推理小説を執筆しているという方で(珍しいジャンルですよね?)はじめての一般向け作品です。 さすがに読みやすい文章で書かれており、登場人物の描写も生き生きとしているので大変スムーズに読み進むことが できます。だからといって作品の質が軽いというわけではなく、しっかりと本格ティストに仕上がっています。 〜ひとりでに増える駄菓子屋のおかし、透明人間の足跡・・・そんな不思議な出来事を主人公は解いていきます。 今まで本格ミステリを読んだことのない方の入門にも最適な一冊です。

創竜伝 13巻まで…田中 芳樹…[講談社]

何年かぶりに出ました最新作。前巻までの話を思い出そうと単行本を探したのですが、どこに仕舞いこんだのか 忘れてしまったので諦めてそのまま読みました(泣) 今回は外伝っぽい内容で宋代の中国を舞台に青竜王と白竜王が 歴史に影響を与えない?範囲で大活躍します。作者お得意の中国史の世界です。・・・それはそれで面白いのですが、 個人的には竜堂家4兄弟が大暴れの現代編の方が好きなので、早く舞台が日本に戻ってきてほしいですね。天敵・ 小早川嬢の高笑いと歪んだ正義感が気になってます。続巻は21世紀初頭に刊行とのことですが、もうちょっと 急いで出していただけると嬉しいですよね。やっぱり続きが気になるもので。

御手洗パロディ・サイト事件 上・下巻…島田 荘司…[南雲堂]

御手洗ファン待望の新作です。ただし著者が書いているのは、ほぼ前半と後半部分のみ。残りはインターネット上で ファンが発表した御手洗シリーズのキャラクターを借りて書いたオリジナル小説です。それらをうまく絡めて著者が 新たに事件を紡ぎ、解いていくという試みの、一風変わった作品となってます。もちろん著者の筆力は定評高く安心 して読み進むことができますが、ファンの方が書いた小説の方もその人なりの思い入れと世界観が表現されており、 なかなか『こういう御手洗も面白いかもな』と楽しむことができます。ちなみに今回も石岡君と里美ちゃんのコンビ で書かれていましたので、次こそは長編で御手洗が活躍する作品が読みたいですね。

悪魔と詐欺師 全1巻…高里 椎奈…[講談社]

薬屋探偵妖綺談シリーズ第3弾です。ジャンルとしてはミステリなんですが、主人公たち主要キャラが“妖怪”だという のがポイントになってます。そういうと生粋のミステリファンの方々などは敬遠するかもしれませんが、妖怪の 特殊能力などに頼ることなく基本的には主人公の推理で話が進行します。(特殊能力が出てこないわけじゃない ですけど)登場人物(妖怪か?)のキャラクター性も高く、またミステリとしてもよく完成されており、これからもっと ブレイクしそうな注目の作家ですね。

沖田総司恋唄 全1巻…広瀬 仁紀…[小学館文庫]

新選組ものです。この作者はどちらかというと企業小説の書き手だというイメージがあったので、この作品は 偶然書店で手にするまで知りませんでした…内容は新選組ファンにはよく知られたエピソードをうまくアレンジ してあり、また作者の飾らない文章が逆に読み手のイメージを湧かせ易くしており、時代小説独特の文章に慣れて いない方でも一気に読みきることができると思います。(マンガですけど和田慎二『あさぎ色の伝説』を思い出し ましたね)新選組ものの隠れた名著です。

もだえ苦しむ活字中毒者地獄の味噌蔵 全1巻…椎名 誠…[角川文庫]

タイトルが長いですね〜(^-^)元々は本の雑誌社から刊行されていたハードカバーの文庫化です。椎名 誠・初期 三部作のひとつというこの作品、ようやく文庫で読めることになりました。(ハードカバーは高いし読みにくいので嫌 なんですよ)表題作は小説、後はエッセイという少し変則的な構成の作品ですが、後に完成されていくシーナ節の 原点を垣間見ることができ、ファンなら必ず読んでおきたい作品ですね。オリジナルは20年近く前に刊行されている ので、やはり古さを感じさせる部分もありますが時代を超えたパワーのある文章はさすがとしか言いようがありません。

大年神が彷徨う島 全1巻…藤木 稟…[徳間書店]

盲目の探偵・朱雀十五シリーズ第五弾。今回はある南の孤島『鬼界ガ島』を舞台に連続殺人が繰り広げられて いくという、横溝正史の『獄門島』を彷彿させる作品となっており、また京極夏彦作品でメジャー化した感のある “憑き物”もテーマとして扱われているので、オカルト的な雰囲気を好む方には堪らない作品でしょうね。ミステリと してはもちろん一級品、京極ファンならまずハマること間違いなしだと思います。(そう書くと京極作品の模倣かと思 われそうですが違います)独自の世界観を持ったこの作者は、きっとこれから人気作家の一人としてもっと注目され ていくでしょう。今からでも遅くはないので読んでおいた方がいいですよ。余談ですが藤原ヨウコウ氏の挿絵が 作品の雰囲気にぴったりで見惚れちゃいますね。

メフィスト …小説現代2000年5月増刊号…[講談社]

ミステリファンなら毎号購入していると思われる季刊誌です。『よく集めたな〜』という豪華なメンバーによって 執筆されているので、どれから読もうか迷っちゃいますよ、ホントに。これだけの作家陣なら誰か必ず好みの作品 が見つかるはずです。ミステリマニアとして有名な喜国雅彦のマンガも読めるので、よりお買い得感がありますね (^-^)最近注目しているのは、はやみねかおる『虹北みすてり商店街』キャラクターがよく書けており、ユーモアの センスがある作品に仕上がっているので、夏に刊行予定の単行本が楽しみです。また、SFミステリ?とでもいうような ジャンルを築き上げた西澤保彦の『神余響子的憂鬱』もミステリだということを感じさせない面白さです。両作品とも “キャラ萌え”の方々におススメ(笑)もちろん誉めてるんですよ。それくらい魅力があるということなんですから… あとは京極夏彦、法月綸太郎、竹本健治ら人気作家の連載を楽しんで、次の号が出るのを心待ちにしたいと思い ます。皆さんも店頭に在庫があるうちに購入しといてはいかがでしょう?

金糸雀が啼く夜 全1巻…高里 椎奈…[講談社]

薬屋探偵妖綺談シリーズ第4弾です。今回の事件ではいつもの三人組が成り行きから対立する立場となります。 パーティーで宝石『古人の夢』を守る側と盗み出す側。ところがその会場でシャンデリアが落下し、客が潰され 死亡。天井にはなぜか主催者が白塗りの道化師となって首を吊っていた…事件はそれぞれに絡み合い、登場人物 たちを翻弄していきます。果たして解決の道はあるのか?そして三人の関係はどうなるのか…そんな緊張感を だしながらも和やかで微笑ましい会話が多く、しみじみとした気持ちになれます。とぼけた味の刑事・葉山がいい ですね。


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