お茶の間 けいざい学 <1>
 経済学とは──豊か、快適、安全に
 

 経済学は難しいと考えられています。しかし、主婦が夕方からスーパーへ買い物に行き、食材を買って帰り、冷蔵庫に保管し、夕食前に子供を迎えに行く途中でガソリンを入れ、帰宅したお父さんにまずビールを注ぐというところまでを考えても、これらのすべてが経済行為です。

 経済という言葉は明治初めに西洋からエコノミーという言葉が入ってきたときに、翻訳に困った人が中国の古典にあった「経国済民」から取ったと言われています。これは国を安らかにして、民を養うという考え方で、本来のエコノミーが持っていた「節約する」「効率良く使う」という意味からは少しずれてはいますが、当時の日本語が言っていた「なりわい」「商い」を漢語に置き換えたと考えればよく分かる訳でもあります。
 大学には経済学部があり、世界にはノーベル経済学賞までがあります。
 経済の規模が大きくなることが豊かさと幸せの条件と、国民の大多数が考えていた戦後日本では、毎日のように経済学者がテレビやラジオに登場して、景気の話や株式の予測、為替相場の解説などをしていました。
 私たちはいつの間にか、まず難しい経済理論があって、その理論に基づいて経済が運営されているような錯覚に陥っています。しかし、経済活動は石器時代や縄文時代にもすでに存在し、人々の暮らしを支える役割を果たしていました。
 日々の生活をより豊かに、より安全にしたいという先人たちの知恵が積み上がって経済の仕組みが生まれ、これを後から説明しようとしたものが、経済学の誕生と考えれば、毎日の生活そのものが経済学の実行であると言えます。
(2002年9月7日「長野市民新聞」)        
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