シルビア通信1 >> エッセイ >> あの雲のように……

―― あの雲のように…… ――

 日曜の昼下がり。

 愚母がテーブルの食器を片付けながら、私に愚痴をこぼしてきた。

「あーあ、オイラもはやく楽な生活してぇーな。女中さんでもやとって……お前が稼いでくれれば……なあ、仮面マスク」
「あー、無理。オレの器じゃ、奉公するのが関の山だよ」

 それを聞くと、母は台布巾でテーブルを拭きながら、やおら窓の外を見た。

「あの雲みたいに、のんびりと暮らしてみたいぜや……」




 その夜。

 遅く帰宅した父に、母はみごとなカミナリを落としていた。

―2002年7月11日―

←第14話第16話→

   目次      HOME