頭の中になにかしらのメロディーが自分の意識とは無関係に流れて、音を止めようにもどうにも止まらない……という症状と類型のものかどうかはわからないのだが、2日ほど前から私の頭の中で「ディナーショーの会場内では一体全体どんなことが行われているのだろうか?」という疑問が渦巻いてどうにも止まらない。もう「リンダ困っちゃう……」である。
コンサート、マジックショー、アンパンマンショーなどの類はそれとなく内容がわかる。しかし、ディナーショーの事となると皆目見当がつかない。そりゃ大雑把に「料理を食べながらショーを堪能するんだろうなぁ」とは思うのだが、芸能人が歌やショーをやっている横でフルコースに舌鼓を打つなどという行為は「テレビを見ながらご飯を食べちゃいけません!」と親から口酸っぱく言われ育てられた私には到底理解できない世界なのである。
私の住む町にもいろいろな芸能人がディナーショーを催しにやって来る。拙い記憶をたどってみると、最近では『美川憲一』『コロッケ』『ノブ&フッキー』『清水アキラ』といった面々がやって来た。特に美川憲一なんかはしょっちゅう来ているような気がする。よほどこの土地が好きなのか、それともお客が集まるのかはわからないが、それだけ頻繁にやってくる美川憲一のディナーショーの中身でさえ、私にはそれが宇宙の果てであるかのようにうかがい知ることはできないのである。
はたして“美川憲一ディナーショー”とはどういったものなのか?
私がディナーショーというものを想像するときに目の前に浮かぶのが、結婚披露宴会場のような場所でタキシードを着用したフランク・シナトラが『マイウェイ』を歌いながら各テーブルをお客に握手を求めながらまわる、という絵である。なぜ“ディナーショー=フランク・シナトラ”なのかは私自身よくわからないのだが、どういう訳か私の頭の中ではそのように結び付けられている。従って私が想像する“美川憲一ディナーショー”とは、タキシードを着用した美川憲一が『マイウェイ』を歌いながら披露宴会場を歩き回る……とこうなるのだが、これは余計に理解に苦しむ内容である。
そもそもディナーショーというのはそれを行う歌手にしろ、料金設定にしろ、対象年齢が高めのようだが、これはどういった理由からなのだろう。私のこれまでの人生において、
「よい子のみんな! 6月14日は『鶴亀ホテル』でダイレンジャーディナーショーが開催されるぞ! お父さん、お母さんと一緒に奮って参加してくれよな! 鶴亀ホテル『 鳳凰の間 』で待ってるぜ!!」
というCMにはお目にかかったことがない。
この「年齢層が高い」というのがディナーショーを紐解くひとつのキーポイントのようだが、それを念頭にあれこれ考えてみても、
年齢層が高い→小銭を持っている→ディナーショーと称して安い料理をさも高級そうに並べる→何ら疑われることもなく普通のコンサートより高い金をふんだくれる!
という不道徳なことしか私の頭には思い浮かばない。
参加しないことにはどうにもわからないディナーショーの内容だが、その背景には“夕食時に小腹の減ったアーティストが食べ物をつまみながらコンサートをするため”というのが発祥の理由としてあるのだろうと私は踏んでいる。
―2003年12月14日―