つい先日、地元の有力紙『信濃毎日新聞』をいつものようにぱらぱらめくっていたところ、グルコサミンの広告の上にある“ チンパンジーも覚え早い「女の子」”という小さな記事の見出しが私の濁った目に留まった。
「へぇ〜、チンパンジーもオナニーをするんだ……」
と、妙に感心しながら記事を読み進めていくと話はそうではなくて、幼少期の学習能力が人間と同様にチンパンジーの場合も女の子の方が高いことがわかった――という内容だった。先ほどの「オナニー……」と勘違いしたのを満へぇ〜とするならば、本当の記事の中身は8へぇ〜と言ったところか。さすが進化の隣人と謳われるチンパンジーである。たぶんオナニーもしていることだろう。
それにしてもこういった記事を目にすると改めて女性は強いんだなあ、と認識する。
成長は男よりも早いくせに平均寿命は男より長いし、胸から乳は出るわ、鯨でもないのに潮は吹くわ、仕舞には親戚の叔父さんの部屋からパクッてきた『夏は海も女子高生も股開き!』のAVに出演していた女子高生がどう見ても40代だわ、もうやりたい放題である。その狼藉の数々は目に余る。
車の運転なんかでも、私なんかは特に安全運転で――過去に友人の車の助手席に乗っていた際、サイドブレーキで180度ターンをかました友人の首を「てめぇー! 調子こいてんじゃねぇーぞぉ!!」と叫びながら絞めたことがある――前後左右の安全確認を怠らないのだが、多くの女性はこれが出来ていないし出来ていないことを自覚すらしていないから凄い。特に小母様方はこの傾向が顕著で、危険な車線変更や追い越し斜線をトロトロと走ってクラクションを鳴らされても素知らぬ顔でLet's go 信州である。世が法治国家でなければそのベビースターラーメンのようなパーマ頭をふん捕まえて、私のチン毛を一本一本植毛したい。
あれは中学生の時だったろうか。
クラスの女子達が2つの派閥に分かれて、放課後にやいのやいのと言い争っていたことがあった。
一度でいいから女性のブーメランパンティを穿いてみたい……というか、正直頭に被ってソーラン節を謡って夜を明かしたい! そんな乙女心を常に左のポッケに入れていた当時の私なのだが、大声でケンカを続ける女子達を目の前に、
「ここはひとつ男らしくガツンと“ケンカはやめろよ!!”と仲裁に入らにゃならん!」
などと、そのときに限ってなぜか妙に熱い男気に身を焦がしてしまった。
野次馬をかき分けヒートアップする女子に向かい男らしく「おい、やめとけよ!」と声高に叫んだ私。
まぁ、大体が普段の自分らしからぬ行動をすると大変痛い目を見ることになるわけで、この時の私とてその例外ではなかった。
私の声に反応した一方のグループのボス格がきっとこちらを睨んだかと思うと、そのローランドゴリラのような腕で傍にあった机と椅子をがっつり掴んだ。
桜吹雪のように舞い上がった机と椅子。
ソルトシェイカーのようなローランドゴリラ。
私は舌の根の乾かぬ内に教卓の下に避難すると、そのままガタガタと怯えながらケンカが終わるのをじっと待った。本当に怖かった。神様なんてこの世にはいないと思った。
廊下から哀れんだ目で教卓の下の私を見つめる友人達を私は今も忘れることができない。
――あまりに若すぎた、仮面マスク15歳の春である。
本当に女性は強い。
―2004年4月16日―