シルビア通信1 >> 小ネタ >> あいつに!アタック! >> 第3話

「2度目の告白! お前を殺す!」

 校庭の隅で静かにたたずむポプラの木は、2週間前とちっとも変わっていなかった。風に揺らされて音を鳴らす葉を見上げながら、 わたしはため息をひとつした。

「変わったのは、あいつとわたしの関係だけなんだね……」

 そっと幹に寄りかかった。

 ふと後ろを振り返ると、幹の向こう側から隆志が歩いてくる姿が見えた。その光景は2週間前とちっとも変わっていない。

 唯一変わったことといえば、あいつが剣道の防具をフル装備していることくらいだろう

(あいつ……部活を抜け出して来たのかな?)

 そんなことを考えていると、向こうから大きな声で話しかけてきた。

「オ、オス! 自分、音島隆志ッス! 先日の告白の返事をしにやってきました! オス!」
「えっ? オ……オスって……あなた隆志じゃないでしょ? 声とかぜんぜん違うし」
「いえ、自分は音島先輩ッス! 告白の返事を言いにやって来ました! オス!」

 絶対ちがう。こいつは隆志なんかじゃない。だって自分のこと「音島先輩」とか言ってるし。一体どういうこと? 隆志はなんでこないの? こいつは一体誰なの? なんで剣道具フル装備なの?

「ちょっと、あなた何なの? 隆志はどこ行ったの?」
「自分が音島せんぱ……隆志ッス! 好きな色はビリジアンでサイババの奇跡を未だに信じているッス!」
「好きな色だとか、サイババだとか、そんなこと訊いてないの! 隆志はどこ行ったって言ってるの!」
「自分が音島隆志ッス!
「………………」

 このままじゃ埒があかない。そう思ったわたしは隆志(偽)の面を外しにかかった。

「ちょ、ちょっと! なにするんですか? やめてください! 面を取るのは勘弁してください!!」
「あなたが本物の隆志だっていうなら、堂々と顔を見せれるはずでしょ! ほらっ、ほらっ」
「あーーーー!!」

 剣道の面が転がる横で、矢崎滋似の男が体育座りで泣いている。

「ちょっとあなた、これはどういうことなの!?」
「音島先輩がオレに殺されるか、あなたに殺されるか、どっちか選べって。音島先輩が……音島先輩が……うう」

 矢崎滋(似)の彼が言うには、すべては隆志がわたしを避けるためにやったことだなんて言っている。そんな……嘘でしょ? 何であいつがわたしのこと避けるの? わたし、ぜんぜんわかんないよ!

「あ……あの、それから、これは音島先輩からの伝言なんですけど、先輩はあなたとつき合うつもりはないって……」

 ズボッ。

「隆志、今どこにいるの? きちんと返事を……告白の返事を聞かせてよ! わたし、きちんとした返事をきくまでは地獄の底まで追いかける覚悟だよ!!

 夕日に照らされた剣道具一式の横で、地獄突きをくらった矢崎滋(似)が素っ裸で嗚咽していた。

(つづく)



【←第2話へ】【第4話へ→】

   目次      HOME