また、モツゴとシナイモツゴ・ウシモツゴでは、尾鰭のV字の切れ込みの深さにも、若干の違いがあります。

 モツゴでは、尾鰭の切れ込みが深いのに対して、シナイモツゴとウシモツゴでは、その切れ込みが浅いのです。

 さらに、黒い縦縞の有無、側線の有無(完全か不完全か)だけでなく、もう一点、3者を見分ける違いがあります。
 これは飽くまで私の個人的な見解なのですが、特に繁殖期ではない成魚では、それぞれの体の地色の光沢さ加減が違うのです。

 モツゴでは、背中側を除く体側のほぼ全域の鱗に銀色の光沢があるので、側面から見た時に全体が「キラッ」と銀色に輝いて見えます(写真1)。

 シナイモツゴでは、側線より背中側の鱗でその光沢が鈍いので、全体が透明感のある「ノペッ」とした感じに見えます(写真2)。

 ウシモツゴでは、体側全域の鱗で光沢がさらに鈍いか殆どないので、全体の透明感はさらに強く「ヌルッ」とした感じに見えます。

 このような、鱗の銀色光沢の程度の違いは、表皮・真皮・鱗に分布している各色素胞の密度や、鱗の金属光沢を表している虹胞層の構造や厚さの違いによるものではないか、またこれら3者の種・亜種分化の方向性を考える上でのヒントになるのではないかと、私は考えています。

 つまり、おおまかに言うと、1・黒い縦縞があって(ない個体もいる)・側線が完全で・尾鰭の切れ込みが深くて・体色が銀色なのがモツゴ、2・黒い縦縞があって(ない個体もいる)・側線が不完全で・尾鰭の切れ込みが浅くて・体色がややくすんだ色調なのがシナイモツゴ、3・黒い縦縞がなくて・側線が不完全で・尾鰭の切れ込みが浅くて・体色に金属光沢のないのがウシモツゴ、ということになります。

 ただし、シナイモツゴには、産地や個体群ごとに、体高が低く体が細長い・体高が高く体がずんぐりしている・鰓蓋や鱗が部分的に透明な個体がいる(写真3)等、それぞれ違った特徴を持つ傾向があります。









 
 写真1・モツゴ






 
 写真2・シナイモツゴ(縦縞が明瞭な典型的な個体)




 
 写真3・シナイモツゴ(部分的に透明鱗の個体)
 ※金属光沢が少なく縦縞を欠く個体は、ウシモツゴに類似する






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