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霜月祭りは国の重要無形民俗文化財にも指定

 霜月祭りは、旧暦の霜月(12月)に、遠山郷の9つの神社で執り行われる。800年の伝統をもつ祭で、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。

 社殿の中央に設けられたカマドの周りで、夜を徹して様々な神事が繰り広げられる。神面の舞いに登場する面(おもて)は、各神社それぞれ特徴があり、面の数も異なる。

 祭りの最大の見せ場は「湯切り」。四面(よおもて)や大天狗が、煮え切ったお湯を素手で五方にはねかけたあと、独特の太鼓のリズムと「ヨーッセーヨーッセー」の掛け声に合わせて観客の中を飛び回りだすと、祭りの興奮も最高潮に達する。

八百万の神々招く「湯切り」

祭りのクライマックスには、大天狗が登場。煮えたぎる釜の湯を素手で五方に飛び散らせて邪気を払う。

 聖なる水と火によって立てられた湯を、神々に捧げるとともに、自らも浴びることで、命を清め蘇りを願うのである。

最後に宮天伯と呼ばれる神が弓矢や剣をもって舞処を清め、直会を経て神事の一切を終了する。

 「神の湯治場」をイメージした祭りは、宮崎駿監督に大きな影響を与え、映画「千と千尋の神隠し」の製作の原点ともなった。

「霜月祭り」を連想させるシーン   映画「千と千尋の神隠し」
祭りの担い手不足が悩み 広く有志を求む
「遠山の霜月祭り」新たな舞の担い手

 飯田市遠山郷(上村・南信濃地区)で12月に開かれる「遠山の霜月祭り」(国重要無形民俗文化財)に向け、地元住民有志らによる稽古が熱を帯びている。上村の中郷地区では、担い手不足から、初めて成人の女性が舞を披露することになった。地域の伝統を末永く受け継いでいこうと、住民らは期待を込めている。

 霜月祭りは、太陽が衰えるとされる旧暦の11月(霜月)に八百万(やおよろず)の神々を招いて生命の再生を祈る。社殿の中央にある湯釜の周りで湯立て神楽を奉納。クライマックスでは、天狗などのお面をかぶった「面(おもて)」が登場し、湯を素手ではねかける。1日から15日まで、九つの地区で順次行われる。

 10月末現在の人口が68人と、上村の4地区の中で最も少ない中郷地区では、2011年から伝統文化の保存を目的に、地区外からの参加も呼び掛けている。今年は7人が住民たちに加わる。

 中郷自治会長の遠山貴志さん(64)によると、数年前まで祭りで中学生が舞を披露していたが、途絶えた。本来、成人女性の役割は祭りの裏方。職場の上司に誘われて2年前から参加する市職員の田中文子さん(30)=飯田市上郷黒田=は、一生懸命に笛の練習をし、多い時には100人分もの食事の準備や片付けをしていた。そんな姿を見て、遠山さんらが「舞をやってみないか」と声を掛けた。もう1人の女性職員と一緒に挑戦する。

 21日夜、中郷コミュニティセンターで、笛や太鼓の音に合わせて扇子や鈴を優雅に操る「産土(うぶすな)の舞」などを稽古した。周りのベテラン勢と比べると、まだぎこちない動きの田中さんも真剣な表情。休憩時間も、地元住民から所作を教わっていた。

 一晩中笛の音が鳴り響いて明け方まで続く祭りは「独特な世界で病みつきになった」と田中さん。「舞の披露を持ち掛けられた時は、祭りの雰囲気を壊してしまわないかと不安だったが、地元住民と一丸となって祭りを盛り上げていきたい」と意気込む。

 田中さんが舞を披露するのは12月2日。正八幡宮で午前11時に始まる。遠山さんは「新たな担い手として、伝統を受け継いでいってほしい」と話している。

信濃毎日新聞(2017年11月23日掲載)