市場の発生は、市場の中に並ぶ、いろいろな商品を比較することを可能にしました。同時に、同じ大きさのブリが、市場の外れでは貝のネックレス1本と交換されているのに、市場の中央ではネックレス2本と交換しているというような事象を人々に気付かせることになりました。 物々交換の比率を比較することが可能になり、人々の頭には、通常のときはブリ1本が貝ネックレス1本と交換できるという大まかな考えが誕生します。
嵐が来た翌日で市場に並ぶブリが少ないときには、ブリ1本に対してネックレスを2本差し出さないと相手が交換してくれないということも学習するようになりました。 価格の誕生です。 貝のネックレスのような中心になる財を基本として人々が標準的な交換比率を意識し始めたときに価格が誕生しました。 後生には相場感と言い直してもよい考え方ですが、これによって人々はあらかじめ、自分の運んで来た商品で何本のブリが手に入るかを予測することが可能になりました。 交換の交渉もおよその相場感の範囲でスタートするので、交渉の時間も価格感の違いによるトラブルも飛躍的に減少して市場はますますにぎやかに、効率的になっていきました。 貝のネックレスのような”貨幣”の発見と、1カ所で多数の取引が同時に行える市場の成立が、交換比率の標準化を進め価格が誕生しました。
このことは市場に運び込まれる財の量と、市場から持ち去られる財の量とを、あらかじめ予測することを可能にして、市場に来る人々の行動をより合理的で効率の良いものに変えていきました。
(2002年10月19日「長野市民新聞」)
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