お茶の間 けいざい学 <8>
 セリの発生──公平で平等な取引
 

 貨幣の誕生と市場の誕生により、人々が経済的に合理的な行動を取り始めると、市場では公平で平等な取引が求められるようになります。ある一部の人が腕力や権力に物を言わせて、相場より物を安く買ったり、高く売りつけたりする市場には人が集まらなくなるからです。


 このことから、市場経済の発達には、市場に参加する全員に平等で公正な取引が保証されていることが前提になっていると分かります。
 現代でも一部の人が勝手なルールで裏取引をしたり、勝手に高い場所代(税金)を取る国や市場からは、お金も人も逃げ出します。皆が平等な立場で、欲しい商品を手に入れようとすると、皆が平等に「欲しい」と手を上げて、欲しい人の中で、くじ引きをすることになります。
 一方、売りたい人の方は、なるべくたくさんの貝のネックレスと交換してくれる人に、商品を渡したいと考えますから、結果として「欲しい」と手を上げた人の中で、最もたくたんの貝のネックレスを払う人に商品を渡すことが、最も合理的で、買いたい人、売りたい人の双方から、恨まれない取引ということになります。
 セリの誕生です。
 売りたい人と買いたい人が、互いに自分が対価として払える財の大きさを競い、最大の財(価格)を払う人に、商品を渡すことが、最も合理的で公正なことになります。この考え方をルール化すると「セリ」が誕生します。同時に後生になって「セリ」は長期的に需要と供給の最適バランスを生み出す機能であると理論づけられました。
 今でも談合や価格協定が不正とされるのは、このような考え方があるからです。
(2002年10月26日「長野市民新聞」) 
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