お茶の間 けいざい学 <10>
 利潤の発生──新商品提供の褒美
 

 何も作らないが、珍しい商品を発見して市場に持ち込む人、忙しくて市場に行けない人に代わって余った財を市場に持ち込む人、市場のやりとりやセリのテンポを苦手とする人に代わって余剰生産物を販売する人など、本来の生産や採取にかかわらないで、流通と交換だけに従事する専門家の誕生は、そのまま商人の誕生を意味します。

 砂漠で渇き切って死にそうな人が飲む1杯の水は命に代わる価値があり、最初の1杯は10万円でも買うでしょう。しかし2杯、3杯と進むうちに、10杯目になると彼は「うーん、1杯100円なら、もう1杯飲みたいけど、1000円ならもう要らないや」と言いだすでしょう。
 これを後世の経済学は「限界効用逓減(ていげん)の法則」といって、新しく珍しい商品は市場価値があり、最初は高値が付くが、市場への供給が増えるに従って価格が低下すると表現しました。
 これは現代でもパソコンやゲームソフトの価格の推移にそのまま見られ、新しい商品に高値が付いても、数カ月で価格が暴落することは誰もが経験していることです。
 この様に最初に珍しい商品を市場に紹介した人には、大きなご褒美が出ます。
 利潤の発生です。
 利潤は市場に新しい商品を紹介したり、不足している商品を市場に持ち込んだ人や、商品を最初に開発した人に与えられるご褒美で、市場の参加者に平等な権利が与えられている自由市場では、人の利益を搾取して得られるものではないのです。
 逆にいえば、常に利益を上げている企業は、常に新製品を市場に投入し、社会に新しい便利さと革新を提供し続けている企業ということになります。
(2002年11月9日「長野市民新聞」)       
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