お茶の間 けいざい学 <12>
 保証概念の成立──市場の取引広まる
 

 商品と交換し得る貨幣に相当する財を持たないまま、市場で商品を手に入れる方法として、前回は「付けで買う」方法を述べました。文字通りの「信用買い」です。
 しかし、信用がない人の場合はどうしたらよいのでしょうか。この場合は、信用のある人に「支払いを保証してもらう方法」があります。商品を購入したい本人には信用がなくても、その親せきに人格や財力からいって市場の信頼がある人がいる場合、この人に支払いを請け負ってもらうのです。
 保証概念の成立です。
 この概念の成立によって市場の取引はさらに広まることになりました。 

 現代でも、まったく信用も財力もない若夫婦が、父親の保証を付けることによって、住宅ローンが借りられ、スムーズに新婚生活をスタートさせることができるケースがありますが、まったく同じことなのです。
 保証概念の誕生は、市場が自己の取引の可能性を広げていこうとすれば自然に生まれてくる考え方で、それが現代では住宅ローンの精ちな約定書や規約、商法の保証概念などに変わってはいても、この考え方も古くからの市場で芽生え、長い間の商慣習の中で整理され、運用方法や契約内容のスタンダード化が行われてきたものなのです。
 実は市場を通しての商行為は精密な連鎖を伴っているもので、ある人が信用買いの借財を支払わないと、この借金の支払い不能は、次々と支払いの不能を引き起こして、市場が崩壊します。それはそのまま経済社会の崩壊を意味しますので、借金の未返済にはいずれの時代にも厳しい制裁が課され、ローマでは奴隷身分への転落、日本の江戸時代では娘を身売りさせてまでして支払うのが当然とされていました。
(2002年11月23日「長野市民新聞」)       
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