お茶の間 けいざい学 <13>
 担保概念の誕生──モノで支払いを保証
 

 市場で物が動くには、売る方と買う方の双方に交換できる物がなければなりません。もし、付けで買い物ができたり、保証をすることで買い物ができれば、当面は交換する対価を持たない人も市場に参加し、物を購買できるので、市場で働く物資は大量になるはずです。

 市場は、大きくなればなるほど多様な種類の物資が大量に集まり、新しい商品や情報に接する機会が幾何級数的に増大します。大きくなりたい、大量で多様な商品や財の交換を行いたいというのは市場の本能で、経済の本能でもあります。限りなく自己増殖、自己肥大したいとの人間の欲望の象徴と言い換えてもいいかもしれません。結果として、代金を持って来ていない人にも物を売りたいと市場は考えます。
 このことは、現代でもサラリーローンの隆盛やクレジットカードの躍進に見られ、人と市場と経済の論理が全く変わっていないと分かります。
 市場で支払う代金を持って来ていない人でも、家に帰れば、大きなシカの角や、浜で拾った美しい宝貝や桜貝を持っているかもしれません。将来の支払いを「人」に頼る「保証」に代わり、家にあるこれらの貴重な「物」に頼る方法を考えだすのも市場の本能です。
 担保概念の誕生です。
 もし、代金を払わなかったら、お前の持っている桜貝を取り上げると約束することから担保や質権の考えが生まれました。担保の桜貝は耕作が始まり、土地の所有概念が成立してからは土地や家だったり、桜貝や宝貝を初めに預かってしまう「質」などに変わりましたが、将来の支払いの保証を何らかの物に依存することを発見し、市場はさらなる可能性を見いだしました。
(2002年11月30日「長野市民新聞」)      
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