お茶の間 けいざい学 <14>
 金融の誕生──代金立て替え払い
 

 市場が、支払いの準備のない人にも物を売りたいと思う本能を持っていることは、お分かりいただけたと思います。
 そのために「信用」や「保証」「担保」などの考え方を発明して、市場で動く物財を拡大してきました。これらの機能はすべて市場の拡大、取引の拡大、そして経済の拡大に役立つものでした。
 市場はさらに自己増殖する方法を発見します。「立て替え払い」です。

 代金を持っていなくても、目の前の宝貝の首輪を欲しそうにしている若者を見つけた売り手は言います。「彼女へのプレゼントでしょ。こんないい物は二度と出ないよ」
 若者が言います。「対価を持ってないんだ」
 売り手は一緒にいる若者の友人に聞きます。「あんた、持ってないの。今日しか買えない物だから支払い代金を貸してやったらどうだ。友達だろ」
 このせりふに負けて彼が友人に代金を貸せば、彼と友人の間に貸借が生れます。
 金融業務の発見です。
 当時は通貨がまだ貝だったり、やじりだったりしたでしょうが、支払いに使った同じ物を同額、友人に返さなくてはならないとの考え方は、金融の誕生そのものです。
 この「支払い手段を貸す」行為は、後に通貨や貨幣が発見され流通するようになると、交換や支払いをスムーズにさせ、財や商品の流通を円滑にする業務として、その重みを増していきます。
  支払い手段を融通してあげることは、前に述べた「信用・保証・担保」などの業務に比較して、手続きや決済の面で手軽で分かりやすいことから、支払いを円滑にする業務の主流になり、やがて立て替えを専門にする金融業者の誕生に結び付いていきました。
 金利の誕生まで、もうすぐですね。
(2002年12月7日「長野市民新聞」)       
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