お茶の間 けいざい学 <19>
 紙幣の発見──信用も乗せて通用
 

 当たり前の話ですが、現在では金または金貨が流通しいる国は世界にほとんどありません。現在流通している金貨はほとんどが投資や保存用のもので、もし流通してもすぐに長野五輪記念1万円金貨のようにすべて金庫やタンスの中に退蔵されてしまうでしょう。
        
 金貨は流通しているうちに磨耗し、中には井戸や川底に落としてしまう人もでます。ある意味では金を流通させることはリスクがあり、もったいないといえます。金の量を書いた紙を本物の金の代わりに流通させようとする発想は当然のこととして出てきました。
 紙幣の発見です。
 紙幣が登場するのは石器時代からは気が遠くなるほど後で、市場の経済が十分に成熟し、人々の間に市場では「約束は守る」「借金は必ず返す」「文書には証拠能力がある」などのルールや約束事が浸透してからです。
 石器時代の経済をお話している本欄ではまだ早いのですが、金の流通と紙幣の誕生は同じ発想の上にあることなので、ここでお話をしておきます。
 世界最初の紙幣は中国の北宋の時代1023年のことといわれています。日本では戦国末期で江戸時代になると藩札が洪水のように発行されました。
 始めの頃の紙幣は決まった場所に提示すれば、紙幣の上に書いてある量の金と交換することを約束している兌換(だかん)紙幣で、金貨を流通させる代わりの証券でした。
 世界でこの兌換紙幣を最後まで守ったのは米国で、ドル紙幣が同額の金と交換できなくなったのは1971年のニクソンショックからです。それまでの米国は世界の通貨の番人として、ドル紙幣の提示があれば、いつでも金と交換するとの立場を崩しませんでした。
(2003年1月18日「長野市民新聞」)       
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