お茶の間 けいざい学 <20>
 兌換の限界──市場拡大にブレーキ
 

 ニクソンショックは、第2次大戦後に世界の富が集中していたアメリカが、だんだん貧乏になって、国の蓄えがなくなり、世界中に流通しているドル札が本当に同じ量の金に交換してもらえるのかと人々が疑いだしたことが原因です。
        
 ドル札の発行総量と米国政府が持つ金の準備量を比較すれば、すぐ分かることだったのです。
 世界のさまざまな国が自国の通貨を発行する場合の価値の基準となっていたドル紙幣は、基軸通貨と呼ばれました。この基軸通貨を発行する米国は、大戦後の世界の経済が急速に拡大する中で、拡大した世界の経済に相当する量のドルをどんどん印刷して世界に流すことが義務でもありました。もし米国がドルを印刷しないで、兌換(だかん)にこだわっていたら、世界経済は米国の持つ金の準備量の大きさよりも大きくなることができず、世界は大不況になっていたでしょう。
 石器時代に戻りましょう。石器時代の“北信濃市場”で、現在の通貨に換算して毎日100万円の取引があったとします。ところが、市場に存在する貝のネックレスは1万円相当の物が10本だけだったとしますと、10万円までの取引は決済されますが、後は決済通貨の不足から競りができなくなります。
 当然に掛け売りや掛け買いもできますが、市場では知らない人同士の間でも取引は成立しますので、現金(ネックレス)決済でなければ売らないという人が多くでます。この人々は、持ち込んだ商品を売らないで持ち帰ってしまいますので、市場の取引は市場に存在する貝ネックレス10本(10万円)分までに縮小してしまうのです。
 つまり市場規模は市場に存在するマネーの量に規制されるということになります。
(2003年1月25日「長野市民新聞」)        
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