お茶の間 けいざい学 <24>
 神話の崩壊──価値が一気に下落
 

 現在の市場制度が神話と暗黙の了承で成立しているものである限り、神話が崩壊して、人々が一種の思い込みからさめたときには大変なことが起きることになります。
        

 戦後の土地神話が崩壊した記憶は皆さんも鮮烈にお持ちと思いますが、今では誰も不必要な土地は買わなくなりました。
 自分が当面必要としない物を買っておこうとするのは、(1)将来必要となるので先に購入するとき、(2)余ったお金を貯蓄する代わりに物に代えるとき、(3)将来の値上がりを期待して早めに買っておくときなどが考えられます。
 将来の値上がりが期待できないとなれば、持っているだけで固定資産税が取られ、売る場合も各種の税金や手数料が掛かる土地は、どの理由からも買えないことになります。
 1987(昭和62)年から91(平成3)年にかけて、多くの日本国民が土地を熱病のように欲しがった現象は何だったのでしょう。
 ブランド神話も崩壊すれば、昨日まで多くの人があこがれたブランド品が今日はディスカウント店の目玉商品として、10分の1の値段で店頭にうずたかく積み上げられます。その日から誰もそのブランド品を身に着けて街を歩かなくなります。例え値下がり前に買った物でも、ディスカウント店の目玉商品になった日からブランド品ではないからです。
 絶対安全と思われた銀行預金が、ある日突然に紙くずになる可能性があると思われた途端、明治以来、営々と築き上げてきた銀行の信用は一瞬にして霧散しました。
 あらゆる面で、実物の裏付けがない現代の経済では、これからも神話が崩壊したら、何も残らない現象が繰り返し起こることでしょう。
(2003年2月22日「長野市民新聞」)       
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