お茶の間 けいざい学 <25>
 地代の発生──稼ぎ上がる所から
 

 市場が発展してくると、古くから市場の真ん中にござを敷いて営業していた場所と、後から市場に参加して市場の外れで商売をする人との間の売り上げの差が、だんだん開いてきます。
        
 まったく同じ商品を同じように売っているのに、市場の真ん中と外れでは4倍の開きがあり、真ん中では1日4万円の稼ぎがあるのに、外れでは1万円の稼ぎしかないとします。
 古くから商売をしている真ん中の商売人が引退したいらしいと聞き込んだ、市場の外れで商売している人が、真ん中の人の所に行って言います。「私にあの場所を貸してください。1日1万円払いますから」 
 彼にとっては1日の稼ぎが、新しい場所では4万円見込めるとすると、1日1万円を払っても、欲しい場所ということになります。
 地代の発生です。
 地代も金利と並んで、人が働かないでお金を受け取る要素ですから、自然発生的な自由市場の中では非常に評判が悪いルールの一つです。
 田舎から東京の大学に進んだ貧しい大学生が、アルバイトをしながら必死にアパートの家賃を払い、眠い目をこすりながら勉強しているのに、家賃を受け取る側の家主の息子は昼間から外車に乗って遊び回っているなどの、若い正義感を著しく刺激した自由経済の負の面を象徴している要素でもあります。
 しかし、売り上げの大きい真ん中の場所が空く場合に、この場所を誰が使うかを暴力や権力を使わずに市場に参加する人々が平等な立場で決めるには、競りしかありません。
 結局は一番高い地代を払うと言った人の所に使用権が行くのが、市場のルールに最も合っているのです。
(2003年3月1日「長野市民新聞」)       
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