お茶の間 けいざい学 <33>
 電子マネーの誕生──最近小口決済にも
 

 現在、世界で流通しているマネーの恐らく99%以上は、コンピューターネットワークの中で、数字の記号として動き回っているマネーでしょう。

 家を購入した場合を考えてみましょう。県内金融機関の窓口で住宅ローンを組んでもらい、住宅会社に代金を払ったとします。代金は金融機関のコンピューターの中で、借り手の預金口座から住宅会社の預金口座へ数字が振り替えられるだけで終了してしまいます。
 恐らく、まばたきする間でしょう。
 もし「2000万円なんて札束は見たことがないので、現金で出していただけませんか。それを住宅会社に持参しますから」などと窓口で言ったとしても、美しいローンレディのほほえみが返ってくるだけでしょう。
 多額の資金ほど電子の記号としてコンピューターの中で処理されます。銀行間の決済、何百億単位の輸出入代金の決済などに現金が動くことはまずありません。
 最近のようにカードが普及すると個人の小口の決済にも現金が動くことが少なくなっています。電話料や電気料も銀行の中で、電子の記号が移動するだけで終了してしまいます。
 現代はすでに不換紙幣から電子マネーの時代に移行しており、人々はコンピューターネットワークの中を移動する電子記号の指令により右往左往しているといえます。
 ちょうど人の頭の中の神経細胞の間を電子信号が飛び交い、そこで生まれた考えが手や足への命令となって人が動いているのと同じように、コンピューターのネット内を走り回る電子記号に従って人が走り、物が動き、世界の経済や政治が動かされているのが現代かもしれません。
 何だか悲しいですね。
(2003年4月26日「長野市民新聞」)        
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