お茶の間 けいざい学 <35>
 新たな市場機能──神の見えざる手で
 

 先週お話した市場の4つの機能以外にも、市場にはさまざまな機能が生まれました。
 先物取引が発見されると、市場には(5)将来、生産される物の量をあらかじめ調整する機能があることが分かりました。見知らぬ人々がまったく平等な立場で競りに参加するため(6)参加する全員が最も納得する形で平和的に物を分配する機能もあることにも気付きます。

 さらに、(7)競りが全員が納得する水準の価格を形成する作業でもあることが分かりました。
 また、腹ペコ集落から来た「ペコペコ」君が最も高い値段で芋を競り落とした理由が、腹ペコ集落では霜の害で芋がとれず子供たちが飢えているからだと知ることで、市場には、(8)最もその物を必要としている人に食料や商品を渡す機能があることも知ります。
 この機能は、あたかも天から神さまが見ていて「今回はペコペコにその芋を渡してやれ、そのことで腹ペコ集落で飢えている子供が10人は救われる」と命令しているように見えます。
 これをアダム・スミスという学者は「神の見えざる手」と表現しました。
 市場に参加する商人は物が余って安い所で物を買い、物が不足して高い所で売ってもうけてやろうという私的な動機で走り回っていたとしても、市場を通すことで、その行動は食料がなくて飢えいる人々のために、食物が余っている所を発見して困っている人に届けてやるという神様のような働きになっているのです。
 このほかにも、市場には「芋が昨日、市場で高い値段が付いたらしい。それならわが家のむろにある芋を明日は市場に持って行って売ろう」というような動きを誘い出す効果もあります。これは次回に述べてみましょう。
(2003年5月11日「長野市民新聞」)        
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