お茶の間 けいざい学 <38>
 市場の空間軸──食糧危機救い合う
 

 「空間軸」なんて、難しいことを言い出して恐縮です。うまい言葉がみつからないのです。

 このシリーズでは、石器時代に直江津の民と戸隠の民が互いに余ったブリとイノシシの肉を交換し、融通し合うところから話を始めてきました。
 市場は物が余って所から、物が不足している所に物を移動させる機能があり、商業活動とは物が余っている所で商品を安く仕入れ、物が不足している所で高く売ることで、価格の差から生じる利鞘(りざや)を稼ぐ活動と申し上げました。
 これは水が水平になることを求めて高い所から低い所に流れるように、市場にも「物が余る所から、物が不足する所へ移動して、物の存在を平均化させる働き」があることを意味します。
 経済の原点、その1
 『経済活動とは、空間に偏在する財を移動させることにより、市場に参加する人々の全体の利益を最大にすること』
 市場が拡大するということは、いろいろな所の水たまりを水路で結び、平均を求めて高い所から低い所に商品が流れるようにすることでもあります。
 実はこの物が流れる動きには、価格の動きも付いていきます。価格も異なった所にある同じ物がまったく同じ価格になるまで、安い所から高い所へ商品は流れ続けます。
 ただし、市場の平準化の動きは水のように速くはありません。実際にはどろりとした水あめが入った水槽の仕切り板を外すと、ゆっくりと高い方の水あめが低い所に移動を始め、やがて平らになる動きとイメージが良く似ています。
 市場で物やサービスが均一になることを求めて空間を飛び回る、この動きを市場の空間軸と表現したのです。
(2003年5月31日「長野市民新聞」)         
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