お茶の間 けいざい学 (39)
 平準化が進む市場──日中間で 所得も
 

 市場や経済が拡大することは、水槽の中で違う高さに仕切られていた水飴の仕切り板を外すことを意味します。

 市場や経済が拡大することは、水槽の中で違う高さに仕切られていた水飴の仕切り板を外すことを意味します。
中国との貿易が始まったことで、今、日本には安い中国産の衣類や農産物が洪水のように流れ込んでおり、物の値段が急速に安くなっていることは皆さん毎日の生活の中で実感していらっしゃると思います。
そして、この動きは日本の衣類や農産物の価格が中国と同じになるまで、止まることはないでしょう。
 日本で一本50円のネギが10円になることは消費者にとってはうれしいことですが、生産している日本の農家にとっては所得が5分の1になることで、死活問題です。
 市場に参加する地域の物の値段が同じ水準になることは、当然ながら所得や給料の水準も同じ水準に向かって動いていることを意味します。
 所得の高い国の国民にとっては給料が下がり始めて大変なことなのですが、所得の低い方の国民にとっては給料が先進国の水準に向かって毎年上がっていくことを意味します。この動きは大戦後に米国と貿易を再開した日本でも、日本人の所得が米国並みになるまで続きました。
 同じことが今、日本と中国の間で起こっているのです。日本人の給与水準が足踏みをする一方で、中国人の給与水準は急速に上昇を始めています。
結果的に給与水準が同じにならない限り、日本企業の中国への工場移転は続くでしょう。ライバル企業に中国の安い賃金で同じ商品を作られたら、自分の会社がつぶれてしまうからです。
これからは中国では作れないほど技術的に高い商品か、日本でしか開発できない新製品以外は日本では生き残れないのです。
(2003年6月7日「長野市民新聞」)         
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