お茶の間 けいざい学 (41)
 空間軸と時間軸──最先端は混然一体
 

 市場が空間の軸と時間の軸の上に生じる価格差を求めてダイナミックに動いている生命体である例として、世界中で一年中、24時間市場が開かれている外国為替市場を取り上げましょう。

 円と米ドルの交換レートが毎日変動するのは、日本と米国の間にあるトータルの財の値段が毎日動くからです。日本全体の物の値段とアメリカ全体の物の値段が変動するからともいえます。日米の空間の間にある価格の差が円相場です。
 同じ外国為替市場の中では円と米ドルの金利も刻々と変化します。これは両国の未来が明るく見えたり、暗く見えたりして、未来の価格が動いているからです。時間軸の間に生じる変動ともいえます。
 為替ディーラー「ソントク」君が今日、100円で現物のドルを買い、同時に1年先のドルを120円で売る予約を取ったら、ソントク君の頭の中では100円が一年先に120円になって帰ってくる契約をしたことで、2割の金利を確定した取引とまったく同じに見えるはずです。
 時間軸の上に発生した価格差を取ることは、金利を取ることと同じに見えます。
 一方で、ソントク君に今日のドルを売った人も、1年先のドルをソントク君から買った人も、それぞれ別の人の可能性が高いでしょう。それぞれの人は、日本とアメリカの間にあった、物価水準の違いを意識して売りや買いの決断をしたのですから、空間軸に存在した価格差を意識した取引であったはずです。
 実は、最先端の現代の市場では空間軸と時間軸が混然として一体となった取引がされています。
  難しくなりました。今晩寝ないで考えたりしないでください。明日の仕事に差し支えますから。
(2003年6月21日「長野市民新聞」)         
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