お茶の間 けいざい学 (42)
 空間と時間の融合──為替取引きが発生へ
 

 空間軸と時間軸が一体となって、絡み合いながら財の量と価格の平準化を求め、ダイナミックに動いているのが現代の市場であるといえます。

 市場から発達した金融業を見ても(1)預金は未来へお金を先送りしておきたい人からお金を預かり(2)融資は未来からお金を送ってもらい今年のうちに住宅を建てたい人に貸し出す業務といえます。どちらも時間軸の上で資金を移動させています。
 一方、(3)東京にいる息子やイギリスで生活する娘などに学資を送金する業務は、お金を空間で移動させることで、為替または外国為替業務と呼ばれます。
 銀行の業務はこれらで構成されています。
 空間軸にある価格の差が為替、時間軸にある価格の差が金利と言い換えてもいいでしょう。
 市場経済は基本的には『空間軸と時間軸の上に生じる財やサービスの量と価格の差を埋めようとする活動』と言い換えることができるのです。
 中国で10円のレタスを日本に持ってきて百円で売ろうとする活動と、夏の野辺山で100円で買えるレタスを冷蔵庫に保管して年末に200円で売ろうとする活動は、空間軸の上を移動させるか、時間軸の上を移動させるかの差であって、取引としては同じことなのです。
 為替相場では5年先の米ドルを売りたい人さえいます。南米で工事中のダム代金が完成時にドルで払う契約だと、利益計算を確実にするため、5年先のドルと円の交換レートを確定しておきたいと考えるからです。逆のケースで売りたい人も当然に出ます。さらに今と5年先の相場の差を利用してもうけようとする人も相場に参加します。
 こうして膨大な為替取引が発生し、現代の巨大な金融市場が誕生したのです。
(2003年6月21日「長野市民新聞」)         
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